第5話 シウオの町
ゴブリンを撃破し、シウオの町に向かう。
「なぁクリス、そういや魔法使ってたよね……」
「使ったのう」
「俺も覚えれるかな?」
「努力次第じゃの」
「そうか……」
でも、努力次第で覚えれるって事は、可能性が無いって訳では無いよね。
「魔法、教えてくれないかな?」
「無理じゃな」
そんな、バッサリと言わなくても。
「さっき努力次第って言ったじゃん!」
「儂は魔法を使える者には教える事が出来るのじゃが、使えない者には出来ないのじゃ……」
「そうなの?」
「すまんの……」
「いや……」
ただの意地悪かと思ったけど違うんだ……。
そうだよな……俺が魔法を覚えたら、生存率が上がってクリスも死ななくて済むもんね。
出来れば教えたかった、と思っているのに違いない……多分。
調子がイマイチの肩を回しながら、町に向かって歩く。
さっき無理矢理に動かしたから、少し楽になった気がする。筋肉痛かな?
とぼとぼと歩いていると、やっと視界に入ってきた。
「見えてきた、町だ!」
「そうじゃな」
思ったより大きな町で、木の柵が町の回りを囲うように建てられている。
獣などは簡単に入って来れないだろう。
町の入り口には小屋があり、衛兵らしき人が二人、槍を立てて見張っていた。
漸く、入り口まで到達すると……。
「止まれ!」
「は、はい! あ、あの、何でしょうか?」
「身分証を見せよ」
え? 身分証? 持ってないよ、そんなの。
あ、学生証だけは有ったが……駄目だよね。
「持ってないです……」
「身分証が無い? 忘れたのか?」
「いや、元々持ってないので……」
「なんだと? 怪しい奴め!」
「蓮斗は馬鹿正直だのう」
クリスが声を出した瞬間、衛兵達が怯んだ。
「なっ、剣がしゃべった!?」
「イ、インテリジェンスソード!?」
わぁ、二人ともびっくりしてる……普通はそうだよね。
「暫し待たれよ!」
そう言い放つと、衛兵同士でひそひそと話し始めた。
すると、衛兵の一人が町の中に走って行く。
それから暫く待たされる事、十分くらいだろうか。
結構、待たされるなぁ……。
すると、町の中から衛兵が戻ってきた……五人に増えて……。
「何これ? 俺ら捕まるの!?」
「慌てるでない、捕まえるのに待てとは言わんじゃろ?」
「そりゃそうだけど……」
不安にかられる俺、これからどうなるのか。
ここで捕まって、デッドエンドだけは勘弁して欲しい。
「これから町の中に案内するが、四人の衛兵と一緒に行動して頂く」
「は、はい……」
言われるがまま、衛兵達と町に入る。
町の人には、物珍しいそうに見られる……視線が痛い。
皆さーん、俺は何も悪い事はしてませんよー! と叫びたい。
そのまま町の奥へ連れていかれ、そこそこ立派な建物の前に到着。
「ここは?」
「町議会棟です」
「そうなんですね」
あれ? 何か話し方が丁寧になった?
「こちらの奥になります。町長がおりますので、お話しください」
「わ、わかりました」
言われた通り、奥に進むと行き止まりになっており、扉が一枚あった。
コンコン、と軽くノックをしてみる。
「お入りください」
「失礼しまーふ……」
噛んだ……。
扉を開けると、白髪で少し小太りの男がソファーに座っていた。
「ようこそ、転移者様」
「え……」
何故、俺が転移者だと知っているのか、動揺を隠せなかった。
「驚いた顔をするところを見ると、やはり転移者様ですね?」
そう言いながら、ニコニコと笑顔を向けた。
「はい……何故それを?」
「貴方のお持ちの剣、インテリジェンスソードとお伺いしておりましたが……」
「儂の事を知っておるのか?」
すかさず、クリスは話しに割って入った。
「おぉ、誠に剣が話すとは……まぁ、先ずはそちらに掛けてくだされ」
俺は頷き、町長と向かい合うようにソファーに座る。
お、柔らかいソファー! 上質なのかな?
なんて事を考えていると、執事らしき男が橙色の飲み物を持ち運び、町長と俺の前に置いた。
こ、これは、もしかしたら……もしかしなくてもオレンジジュース!?
「どうぞ、お飲みください」
「ありがとうございます」
すぐ手に取り、一口…………旨い!
村で一杯食べ飲みしたけど、パンと野菜炒めと水だったからなぁ。
オレンジジュースに感動していると、町長が口を開いた。
「では、少しお話しをしましょうか」
「は、はい」
何についてだろう。
少なくても、クリスと転移者の話しに違いないけど。
「この世界には、共通の言い伝えがあるのです」
息をのみ、町長の話を聞いた。
話が終わったら、町の観光をしよう……。
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