第155話 祭りの終わり
闘技大会が終わり、夏祭りの終わりが近づいてくる。
今年の夏祭りは例年とは違う皆で作り上げたものであり、皆で作ることのできるものなのだということを知らしめる大きな意味のあったもの。
そんな記憶にも記録にも残るような夏祭りの締めくくりである花火が打ち上げられようというとき、そんなことよりもとノアに詰め寄る学生たちがいた。
「学園長、グリモワールとは一体何なのですか?」
意思を持った本と言われる魔導書。
その希少性と多様性ゆえに謎に包まれている。
しかし今日行われた闘技大会にて、アルトはギフトがグリモワールから出現させた剣を魔力支配によって奪い取ってみせた。
奪えなかったのであれば、何の手ごたえもなかったのであれば、この国一の知恵者に詰め寄ることもなかっただろう。
だが奪い取れたのであれば、謎に包まれた力がほんの少しではあるが見えたのであれば、気になるのは当然である。
まして自分が使う力、ライバルが使う力であればなおのこと。
「そうは言っても、儂もグリモワールについてはさっぱりで…………クロイは何か知らんのか?」
「俺が知ってるのは意思のある本ってことくらいだ。あとは…………何が起きるかわかったもんじゃないからさっさと殺すとかか」
グリモワールを持つ者がいる場所でさっさと殺すなどと発言するクロイに引くノアだがふと思い出した。
立ち入り禁止の森に建つ一軒家にグリモワールの研究をしている者がいることを。
しかしそこには大量のグリモワールがあり、常識とは隔絶した世界が広がっている。
そして何よりも、最強の魔術師集団と言われた学生たちが自身の無力さに押しつぶされてしまわないかが気が気でなかった。
「…………まぁ良いじゃろう」
今はもう違う。
上には上がいることをよく理解している今の彼らであれば、たとえ一冊見つかるだけで国民全員が大騒ぎするような代物を複数冊所持している姿を見ても問題ないであろう。
そう判断しノアは彼女のもとへと連れていくことを決めた。
「今更とは思うが言っておく、常識の崩れるようなものを見ることになるかもしれない、覚悟をしておけ」
らしくもなく事前に警告されたうえに前回森へ踏み入った際には常識では測れない者が現れたたために不安を覚えるが今回はクロイもいる。
自分達では対処できないような相手がいても大丈夫だろうと心を落ち着け森へと向かった。
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