第144話 闘技大会第四ブロック

第四ブロックにはルクス。

近接戦闘を不得手とする魔術師を狩る体術、魔力操作を不得手とする英雄を狩る魔力譲渡、相手の苦手を異常な方法で突いてくるルクスは、生徒会入りを果たすよりも前からずっと注目されていた。

それこそ、魔力操作に力を入れる第一学園の生徒がいるのなら、そいつはルクスを警戒しているとまで言われるほど。

しかし今年に入って突如新たな戦法で戦ったルクスに対し、一体どれだけの戦法を隠しているのかと、驚きと共により一層警戒することとなる。

ギフトやアルトから何が飛び出しても今更驚きはしない。

ガイストが力を隠していたことは学園順位を見れば一目瞭然。

アストロは元々よくわからず、一学年のイフの情報はまだまだ少ない。

五年間の情報が合って尚、誰も予想だにしなかった新たな戦法だったからこそ、皆はルクスという魔術師を意識した。

そして今、闘技場内で開始の合図を待つルクスは、身体から暴れる雷のような魔力をだだ洩れにして周りを威嚇している。

闘技場内はもはや、開始の合図を待つまでもなく戦いが始まりそうなほどに空気が張り詰めていた。

戦闘開始の炎が上がり、ルクスは獰猛に笑う。


いかづち


ルクスの肉体を激しい電撃が奔る。

姿勢を低く、狙いの位置を見据える。


閃電せんでん


速さに特化した雷の強化魔術。

魔術によってさらに速度を増したルクスの動きを捉えられる者は出場者の中にはいなかった。

最初にいた闘技場の端から一気に中央まで移動すると、雷のような跡を残して飛び上がる。

まるで空でも飛ぶかのように、ルクスは身体を空中で回転し上下を反転させ、手を地面へと向けた。

バチバチと弾けるような雷がルクスの身体を駆け巡る。


霹靂へきれき


魔力の高まりを感じ、出場者たちはいっせいに上空からの攻撃を警戒し全力の防御態勢を取った。

次の瞬間、ルクスの手から大樹の如く細かく裂けた雷が闘技場全体へと、出場者全員を標的として落ちた。

全力で防御を行ったものの、雷はその防御を超えて肉体へと至る。

半数近くは倒れ、倒れなかった者も膝を着き、身体を駆け巡る電撃に動けなくなる。

地面に降り立つルクスは周囲を見回し口を開く。


「身体が動かないか?それじゃあ魔力の操作が出来るほどの余裕はなさそうだな」


不敵な笑みを浮かべて指を鳴らした。


「放電」


動けずにいる出場者たちの身体を駆け巡る電撃が突如小さく弾けると、その直後爆ぜるように電撃が内側からその身を灼いた。

全員が倒れるもルクスは強化魔術を解かない。

それもそのはず、この数試合を見てルクスは既に気付いていた、この大会には必ず彼の出鱈目どもに入れ知恵をされ、格上の不意を突きその首を刈り取らんとする者がいることに。

しかしルクスの警戒を他所に、勝利のコールが為される。

拍子抜けといった様子のルクスだが、ルクスが警戒していた出鱈目に入れ知恵をされている出場者は雷に倒れたわけでも、放電に倒れたわけでもなく、そもそもいなかったのだ。

何故ならばルクスの相手を用意するはずのブラッディ・メアリーことカラミティは、アインス以外の命令には一切従わない。

アインスからの命令にもつまらなそうと感じれば従わず、年がら年中アインスの部屋のベッドの上でゴロゴロしているだけ。

今回の件もブラッディ・メアリーとして動く分にはよかったのだが、教えても勝てるとは思えない相手にわざわざ教えるのはつまらないと感じ、ルクスの相手は全く用意されていなかった。

観客を熱狂させるような派手な戦いぶりではあったが、当の本人は完全に不完全燃焼で終わった。

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