魔法都市オリオンの剣士

龍牙王鳳

プロローグ

魔法学園

「これが、学園ってやつか」


目の前にそびえ建つ4階建ての校舎が東と西で別れていて、東校舎の隣にグラウンドがある。ごく普通の高校。呆気に取られていた新入生の一人である俺山野大知やまのだいちは、この物語の主人公である。


「おいてめぇ!俺にぶつかってんじゃねぇぞ。2年の弱者のくせに、生意気だなぁ!たかがEランク風情が!」


「や、やめてください!すみませんでした!痛っ」


「?、何事だ?」


呆気に取られていたが、騒動が起こっているらしく、その話声がうるさかったので現実に意識が戻る。俺は、その現場へと駆け付けた。そこにはこの立花学園の生徒たちであろう集団ができていた。


「リーダーに喧嘩売ってんのか?小僧」


「俺たち3年でAランクに喧嘩を売ってんのがどーいうことか、わかってんの?」


なにやら揉め事が起きているようだ。3年生と自称している、いや、ほんとに3年生なのだろう三名が弱い者いじめをしている風にしか見えなかったが、格下のやつがぶつかるのが気に食わなかったのだろう。


しかも、ぶつかってしまった2年生の方はもう手を出されている。やり返せば正当防衛になるのだが、おおごとにはしたくないはずだ。しかし、この有様を見た俺は、3年生らがバカバカしくなり、思わずカチンと来てしまった。


人混みの中を両手でどいてと促し、道を作る。そして、喧嘩している4人のところへ。


「おい。AランクとかEランクとか、3年だとか2年だとか、知ったこっちゃねぇけどさ。みっともねぇ真似すんなよ」


「ああ?なんだおめぇは。新入生か?死にてぇのか!」


「死にたくはないね。俺には、やるべき事があるんで」


「いいや、死んでもらおうじゃねぇか。おい!お前ら、こいつを殺っちまえよ!」


「それを待ってましたよリーダー」


「了解しやしたリーダー」


ちょっと小柄な2人が俺を見据えている。どうやら、本気で殺しにくるらしい。あんま喧嘩とかはするなとかに言われてんだけどなぁ。


「ちっ。俺のせいでもあるから仕方ないか。2年の先輩。ここから下がってください。俺が仕返ししときますんで」


「き、君。新入生だよね?大丈夫なのかい?」


「特待生なので、大丈夫かと」


「特待生か。なら任せてもらうよ。ごめんね、巻き込んじゃって」


「いいですよ。あいつらが気に食わないだけですので」


「話はそこまでだァ!俺たち3年を甘く見るなよ!魔装展開!」


2人同時に魔装とやらを展開させる。どうやら、この魔法を舞台にした学園の武器なのだろう。2人の腕に頑丈そうな黒いコテが出現する。


「まさか、お前。こういうのを見るの初めて?ギャハハハ。ぶっ飛ばさせてもらうぜ!」


一人がこちらへ迫ってくる。俺は目を瞑り意識を集中させて、自分の剣を出現させる。その持つ部分を両手で持って。


「俺の名前は、山野大知。立花学園1年生。参る!」


俺は向かってきた一人のストレートパンチを軽く交わし、両手で構えた剣で横腹から斬りつける。 しかし、これはあのコテで防がれた。


「ほう。なかなかやるではないか。しっかし、今のご時世で日本刀とは、頭おかしいんじゃないのか!?魔力充填。いくぞ、スマッシュ!!」


彼の力強いストレートパンチが、俺の腹へ上から襲いかかる。しかし、それを剣で受け止めようとする。だが、受け止めようとしたその時、巨大な爆風が俺を襲った。スマッシュによって風が起こったのだろう。その爆風に耐えながら剣で迎え撃つ。


「俺の本気のスマッシュを止めるか。なかなかだな!レフトスマッシュ!」


今度は左手で強烈なストレートパンチをうってきた。それも剣で受ける。


「ほう。その1年、面白いじゃねぇか」


リーダーであろう巨漢の男が、感想を述べる。


「だが、そこまでだ。ファイヤーブラスト!」


リーダー野郎から、魔法が放たれた。これはまずいと、剣で相手のパンチを受け流して相手を壁役にさせるために、俺の目の前の地面へ叩きつける。


「痛っ!あつっ!」


作戦は見事に成功し、魔法を防ぐことに成功する。


「コノヤロウ……」


リーダーが次の一手を使ってくるかと思ったが、どこからか「そこまで!」と、止める声が聞こえた。


「なにをしているか、愚か者。今すぐ杖を戻しなさい。それに、1年生である君も!なにをしているのだ。3年生へ喧嘩を売るなど」


俺は日本刀をしまうというか、その場から消すと、喧嘩を止めた人へ応答する。


「いえ。2年生の先輩が、あの人にぶつかってしまっただけで、あの人がカッとなってたので気に食わなくて、思わず2年生の先輩を助けようとしたまでです」


「そうか、くれぐれも気をつけてくれたまえよ」


「はっ。失礼しました」


俺は戦闘が始まる前に置いてあったカバンを手に取り、その場をあとにする。あの人、一体誰だったんだろう。美しい青い髪をして、大人っぽい華奢な体をしている女性。先生かな……。


考えているうちに、頭がおかしくなりそうだったので気を取り直して教室へ向かおうと決めた。

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