23話



「え?遊ぶって……。今はそれより重要な事がいっぱいあるんだよ? ダメだよ」



 遊ぶなんてそんなことしてたら、やるべきことをやる時間がなくなるし大人ってそんなことしないはず。



 だけど、白雪さんはあたしの疑問と迷いに真っ直ぐに答えてくれる。



「そんなことはありません。何故、それでは宅飲みする人がいるのでしょうか? 他にも、あたし達にはできない遊びを大人の方々はなさっていて日々の仕事で溜まったものをちゃんと吐き出しています」



 ぽかんとしてると、白雪さんはさらに説明をしてくれる。



「カフェやカラオケやゲームセンター……。同じ場所で同じことをしても、子供の遊びと大人の遊びは意味が違うんです。ただ今の事しか考えないで遊ぶと子供ではなく、明日のために遊びの時間を使う大人。間森さんは、そんな大人の遊び方をしてみてはどうでしょうか」



 そっか、確かに大人の人だって遊んでる。



 その理由って人付き合いくらいしか分からなかったけど、そう言う考え方があるんだ。



「明日のために遊ぶ……か」



「そうです、人間は走り続けることができませんから遊ぶという休憩が必要なんです。間森さんは大人ですから、それができます」



 そっか、大人のために遊ぶんならいいってことか。



 そう言えば、みんなの付き合いで、喫茶店とかには行くけどどあたしから何かっていうのは全然なかった。



 それはなんだか、遊ぶっていうのが子供っぽくて悪い事っていう固定概念があったから。



 みんなは子供として遊んで楽しめて、あたしは大人として明日のために遊ぶ。



 それなら、いいってことなんだ。



 こういうことを考えられる辺り、やっぱり白雪さんは大人なんだって思っちゃう。



「うん、そうだね……遊んでいいならしたいことあるんだ」



「ええ、ぜひやってみましょう」



「できれば、白雪さんも一緒にって思うんだけど」



「間森さんとなら、やぶさかではないですが。何ですか?」



「カラオケ。もう全然いけてなくって。はしゃぐなんて、子供っぽいかなって思ってたの。でもさ、やっぱり楽しいから。ね、どう?」



「え、カラ、オケ……」



「どうしたの? もしかて、苦手だった?」



 目の前の白雪さんが明らかに動揺した、あたしに初めて見せる顔をしていた。



 明らかに困ったような感じで、目があたしの方じゃない方を見てる。



 白雪さんだってカラオケくらいは行ったことがあるはずだから、もしかしたら何か嫌な思い出があったのかもしれない。



「なら、無理にはいいよ。みんなと行ってくるから」



「ああ、いえ。今日、明日という訳では、無いですよね」



「もちろんだよ。今から誘ってなんて、みんなも迷惑だしさ」



「なら、数日後でお願いしたいのですが。ともかく、今日とか明後日は避けていただけると助かります」



「うん、いいよ」



 白雪さんにも予定ってものがあるだろうし、急にっていうのも困るはず。



 楽しみになってきて早く行きたいけど白雪さんと遊べるっていうだけでもきっと楽しいし、他のみんなと遊べるならさらに楽しくなりそう。



「じゃあ、決まったら連絡するからね」



「はい、お待ちしています」

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