19話 side 白雪澄乃



 間森さんと別れたあたしは、ぼんやりと空を見つめて歩いていた。



 ちょっとびっくりした。あんなことになるなんてさすがに想定外もいいところだった。



「間森さんの一番の特別な友達……か」



 お兄ちゃんの一番にはなれないってわかっていたから、いい。



 それでも、特別なんだとは思っていた。



 でも、間森さんは一番……か



 一番……そっか、一番の特別。



 自然とあたしの中に、満足感以上の何かが湧き上がってる。



「あはは、なれたんだ!あたしは誰かの特別に、それも一番の特別に! そうだよね!あたしは、あたしは特別な人間なんだもん!」



 なれるはずって思ってた。



 誰かの特別になるのは、あたしにとって定められていた運命。



 だけど、いつかは分からなかった。



 さすがにあたしだって、自分の未来をはっきり予言するなんて無理。



 でも、今日がその運命の瞬間だったんだ。



 そっか、そっか、間森さんがやっぱりあたしの運命の相手だったんだ。



 あたしの考えに、やっぱり間違いはなかった。



「間森さん……あたしの運命の人」



 そうなったら、あたしのやる事は決まっている。



 特別で一番の相手にあたしにできる事、することはたった一つしかない。



「あたしの全てを賭けて、幸せにしてみせますからね」



 あたしの顔は自然に、いつにない笑顔を浮かべていた。



 だって、こんな幸福感を得られて笑顔にならないなんて無理だったから。



「だって、運命の人なんですから、あたしがそれをするのは当然ですよね。必ず、してあげますから。『大人の間森さん』っていう人間に……ね」



 間森さんにとって大人っていうのは、憧れよりきっと強い物っていうのは感じていた。



 だったらその大人になるっていう望みを叶えることが、あたしのなすべきことだ。



「大人にしてあげます。間森さんのなりたい大人に……あたしが。あははっ! 絶対してあげます!何を使っても、どんな方法を使っても!幸せになれるんだったら、あたしがなにしたっていいですよね、間森さん」



 そうなったらきっと間森さんはあたしを、もっともっとずっと一番に置いてくれるはず。



 そんなことを考えたら、あたしの心は羽が生えたように軽くなった。



「間森さん、



 理由は、本当にバカバカしいほど単純だ。



「だってあたしが、一番の特別な友達なんですから。一番側に居るんですから。ね、間森さん」



 あたしは、同じ夏の夜空の下にいるだろう間森さんに向けた言葉を空に投げた。



 お兄ちゃんを失って何もなくなったはずの日々はもう、終わり。



 本当の運命の人と過ごす、見上げた夜空にある星々のような無数の輝きに満ちた日々の訪れ。



 それをあたしは、確かに感じていた。

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