16話
「あたしに、他の方から見ればまだまだ、間違っている選択をすることだってたくさんあります。その中でもしかしたら、噂になるような事をしているのかもしれませんね。お兄ちゃんにはいろいろ頼まれて、それに必ず応えてきましたから」
「な、何を……?」
頭の中は、もう何もかも追い付かない。
そして目の前で自分のことなのに、白雪さんは他人事のように淡々と話し始めた。
「例えば、お兄ちゃんの周りには今は、十数人の女の子が居ます。右隣が一番のお気に入り、左隣がその次。それは順番になっています。当然、遊びに行くのも同じ。毎日その数十人の中から、順番に遊んでいます。不公平になって、みんなが文句を言わないようにっていう事の決まりますね」
「白雪さんも、当然その中に居たんだよね」
彼女になってないとしても、白雪さんの立場はそんな妹。
先輩がいつからそんな女の子に囲まれていたか分からなけど、幼馴染としてずっと身を置いていたのだからやっぱり彼女にもなりたくなってしまったんだろう。
「一度だってないですよ。右に立ったことも、左に立ったことも。そもそも、彼女たちの輪に入ったことだってありません。だって、あたしは彼女たちのような立場ではなく妹でしたから。二人っきりで出かけたのは……あったかな?」
「え?」
白雪さんの言葉は、到底信じられないものだった。
だって、二人は幼馴染出会いと妹っていう関係だったのに、二人っきりで出かけたこともなくってそのグループには入っていませんでしたなんて言われてても嘘としか思えない。
「妹は彼女じゃないですから当然ですよ。あたしは妹として、大好きなお兄ちゃんの幸せと願いのためにすべてを捧げる立場ですから。そうすることで得られるのは、あたしの居場所。そして、心が満たされるような幸福と満足感でした」
「居場所……?」
前も確か言っていた、居場所場所って言葉。
だけど、白雪さんは高校では一人ぽっちで居た気がする。
先輩の側には居なかったっていうし、居場所なんてないようにあたしには思えた。
「学校と言う場所でに対してあたしが必要以上に危害が加わろうとすると、お兄ちゃんが止めました。止める力を持っていたと言う事ですね。だから、あたしはクラスで一人であっても安心して学校生活を送ることもできました。間森さん?」
「な、なに?」
「さて問題です。十数人の女の子と一人一人のデートするときに、お兄ちゃんが相手にごはんや遊びのお金を相手にも払ってもらっていると思います?」
もうすっかり、白雪さんの話す事に追いつけない状態なのに、さらに言葉を重ねてきた。
といっても、強引っていう感じはない。
様子はさっきまでやってきた勉強会で、あたしに教える時と全く変わらない。
「だ、だって、彼女なんでしょ?やっぱり出すのが当たりま――」
白雪さんは間違いと言わんばかりに、あたしの言葉を途中で遮って首を振った。
「しませんよ。エスコートする男性が、女性に払わせるなんてかっこ悪いと思う方はまだまだ多いです。特にお兄ちゃんは、彼女たちの事を本当に大切にしていましたからね。どんな場所に行っても、お金は相手の方はほとんど出していないと思います」
そんな事、信じられない。
でも、白雪さんがこんな風に言うんならきっと事実なんだろう。
「もちろん、どうしてもって言われた場合は受け取っていたでしょう。あまり断わってしまえば、相手を逆に傷つけてしまったり、心に壁を作ってしまいますからね」
「そんな……。でも、そのお金は?郡司先輩バイトしてたら遊ぶ暇なんてないよね」
「お兄ちゃんの家は資産家ですから、多少のお金はあります。けど、それだけでは足りないのは間森さんでもわかると思います」
「じゃあ、どうしてたの? え、あのさ、まさか……」
「はい。あたしですよ。お兄ちゃんを金銭的に支えた居たのは、あたしです」
聞きたくなかった言葉なのに、それは白雪さんの口からあっさりと聞こえてきた。
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