14話

「いよいよ明日だね」


「あたしとしては、やれることはやるだけはやりました。間森さんも、あたしなんかにお付き合いしてくださってありがとうございました。そして、お疲れ様でした」


「いや、お礼言うのはあたし。一人じゃここまでやらなかったと思うよ」


「では、お互い様ですね」


 テストはいよいよ明日に迫った、日曜日。


 あたしは白雪さんと一緒に、そんなやり取りをしながら夜空の下を歩いていた。


 まぁ、あと1回くらいやればいいかと思った勉強会は、結局毎日になっていた。


 場所は、全部あたしの家。


 みんながやってるらしいファミレスでもって思ったんだけど、白雪さんが


「絶対サボりますよ。あそこは、誘惑多すぎですから」


 そうにっこり言ったので、あたしの家ばっかりになった。


 勉強に関しては白雪さんに従っておけば間違いないと思ってるし、実際家ですっごい出来た気がするからそれでよかったんだと思う。


 白雪さんは本当にいろいろ知ってて、あたしができるように工夫をしてくれた。


 無音じゃなくてあたしの好きな曲を聞いてそれをうっすら流してみたり、一教科当たりの時間を色々考えてくれたり。


『間森さんのお役に、あたしは立ちたいんです。どうしようもなく迷っていたあたしを助けてくれて救ってくれた、特別な人の役に立ちたいんです。あたし、特別な人の為なら、すっごい頑張れるので。結局、あたしのためなんです。これは』


 あまりにもいろいろやってくれるので、理由を聞くと迷うことなくそんな答えが返ってきた。


 ほんと、すごい。


 真っすぐで、自分て物が分かってる白雪さんはあたしは大人だって思えた。


 振り返るとどう見たってあたしが子供だって思ってしまうけど、それを白雪さんには絶対に知られるわけには行けない。


 子供だってばれたら、白雪さんはきっとあたしを捨てちゃう。


 特別な人って思わなくなっちゃうに決まってる。


 だから、あたしはいつものあたしで居続けた。


 勉強の事以外はあまり話さないけど、学校の空き時間も大分話すようになっていた。


 あたしの周りの友達は最初は心配していたけど、今はあたしの様子を見てあんまり気にしなくなっていた。


 それに、白雪さんに対する拒否反応も薄くなったみたいで、たまに何人か勉強について聞くようになっているのをあたしは見るようになっていた。


 今、隣を歩いてる白雪さんは、出会った頃と外見は変わってない。


 少し大きめの制服に、つやつやした黒髪のおさげ。


 もう当たり前となった、あたしの半歩後ろのポジションを歩いている。


 いつもは玄関で別れるのに今日一緒に歩いているのは、最後ってことでお礼ついでに途中まで送っていくことをあたしが提案したからだった。


 白雪さんは嬉しそうに頷いてくれたけど、それがチクリと痛んだ。


 だって、あたしは白雪さんにウソをついていたから。


 実際の目的はお礼なんかじゃないんだよ、白雪さん。


 嘘をついてる自分が嫌だけど、白雪さんにどうしても確かめたいことがあった。


「ごめん、白雪さん。時間大丈夫? ちょっと話したいことあるから公園、寄っていい?」


「全然。親には遅くなるって言ってありますし、相手が学校の大切な友達だって説明すれば平気です」


 きっぱり言う白雪さんに、あたしの胸はさらに胸が痛くなる。


 こんな素直に迷いなく、あたしを大切な友達って言ってくれる白雪さんを騙してる。


 そう思うと、自分がどうしようもないクズに感じられる。


 でも、どうしてもあたしは知りたいと思っちゃったんだ。


 白雪さんとあたしが大切な友達同士になるために、あのみんなの言っていた噂が真実かどうかってことを。

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