第73話 モナの変身

 服を買いに来た。筈だった。

 しかし今必要なのは防具屋だ。急遽ビキニアーマーの予備を作って貰う事となった。今のを置いていきコピーを作成して貰うのだ。2つお願いした。明日は簡易的な胸当てだけで良いという。40階層迄はこれでもなんの問題はないと。俺が予備の防具の有無を聞くと無いというのだ。2個作るのは予備+コピーを作る時にいちいち別の種類の防具を着けるのは宜しくないからだ。特に女性用の鎧などはバストサイズで変わってくるので胸の部分を調整して貰う必要から特注になる事が多いと聞いたからだ。


 防具を壊すとジャストフィットする防具が暫く無い事になる。これから逃亡する事を考えると替えをオーダーし完成を待つ余裕が無いからだ。


 防具の発注と代替え装備を購入し、それからようやく服屋だ。

 マントも無いと言うのでマントと家の中や普段着、野営中の寝巻き等を買っていく。俺は近くの店で履物を買う。主にサンダルだ。野営の時にいちいち靴を履いていると煩わしいからだ。


 外で待っているとエミリーが品の良いお嬢さんというか見知らぬ淑女と出てきた。


 聡太「エミリー?そちらのお嬢さんは?」


 エミリー「ふふふ。モナさんよ」


 聡太「ばか言え、あいつがこんなにお淑やかで品が良いわけないじゃないか!?ってまさか!」


 モナ「フフフどうですか私は?お師匠様の為に着てみたのですわ。惚れても良いのですよ!」


 聡太「あいやー驚いたよ!ふえー化けるもんだなあ。うん!外観には惚れたけど、おつむが残念さんだから惚れないぞ!」


 エミリー「ね!言った通りでしょ!モナさんは見た目は良いのですからトニー好みに着飾ってお淑やかな言動になれば振り向いてくれますよ!ねっトニー」


 聡太「それをエミリーが俺に聞くか!?うんまあそうだな。俺は今のようなお淑やかにしているモナの方が好きだな。まあ無理だと思うけどそのガツガツした性格が無ければ惚れるかもよ。まあ頑張るんだな」


 と腕を組みやすいようにわざとしてやったが反応がない!


 聡太「ほら、せっかく腕を組んでやろうとしているのに腕を組んでこないだろ?男勝りだから分からず出来ないんだよ。そういう所を直そうな」


 モナ「あ、あのお師匠様私と腕を組んで頂けませんか?お嫌ですか?」


 聡太「そうそう、ちゃんとできるじゃないか。家まで腕を振るう組んで行こうか。慣れない履物だろ?足元に気をつけるんだよ。いざとなったら受け止めるけど、怪我のないようにな。じゃあ帰ろうか」


 そうして二人に両腕を組まれ家路に就くが、やはり履物の所為かモナの歩き方がぎこちなくちょっと罪悪感が湧く。

 そして家に帰り洗い物をしていたリリアがモナを見て持っていた鍋を落として絶句した!ただいまーとモナの声で帰宅の挨拶をした女性は声からモナと分かるが、どう見ても別人なのだ。髪の色とか変えていないが、品のある美しいお嬢さんだからだ。リリアが俺を隅に押しやり


 リリアが「そ、そうらさん、あ、あにょひとモ、モ、モナひゃん?ひえー嘘と言って!」


 聡太「驚いただろう!俺も物凄く驚いたよ。外面は変わっても、中身は変わらんけどな」


 リリア「はあ!驚いたな!うんうん。これならまあ良いかな!ねえねえ性根を矯正してもいいよね!?」


 聡太「何が良いか分からんけど、変えられるなら性格変えてみな。まあ難しいと思うけど。あれは美少女の面を被ったおっさん伽羅だからな」


 そうしていると食卓に並んだ料理から漂う香りが食欲をそそる。


 モナの食事を見るとテーブルマナーが悲劇的だった。やっぱり典型的な脳筋だなと思いつつ、エミリーと席を代わり、テーブルマナーを教えていった。

 モナは驚いていたが俺はついつい


 聡太「まあ弟子の食事のマナーがなってないと師匠の品が疑われるからな。特別だからな」


 そういうとモナは泣き出した。エミリーとリリアもニタニタしている。


 俺はオロオロしてしまい


 聡太「お、俺なんかやらかしたか!?」


 モナ「ほめんなさい。ぶれじぐで」


 聡太「ちょっと落ち着いて喋ろうな。深呼吸してもう一度な!」


 モナ「失礼しました。その、嬉しくてついなみだが出たのです。やっと弟子と言ってくれましたので」


 俺は失言に気が付き今更引っ込みも付かず諦め


 聡太「まあ、ちゃんとした格好をして俺の目を愉しませる事が出来たから、まあ弟子位にはしてやるって事だよ。あくまで弟子だからな、調子に乗るなよ!」


 モナは目を腫らし、ただ只頷く。オネエからのギャップが激しく、ギャップ萌をしているのだが、そんな心の変化に戸惑う聡太であった。

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