第4話 ブチギレ魔王
魔王は決心した。必ずこの見かけ倒しのクソザコアホアホ犬畜生の責任をここに連れてきた女神に取らせてやる、と。
魔王の目の前に倒れる両断された獣。期待外れのこの獣への失望は図りしえないものであった。
血が焼けた悪臭が辺りに広がりそれもまた怒りを助長させる一端になる。控え目に言っても魔王は激おこである。
怒りでいっぱいの魔王の下にある声が聞こえた。
動くな、と。
「突然の無礼を失礼します~。どなたか存じませんが、敵意がないのであれば~両手を頭の後ろにお願いします」
「こちらは一応、客人なのだがな。」
背後から聞こえたのは柔和なようで確かな敵意を含んだ声。その声に応え、彼はその姿を一瞥するために振り向いた。
その女性は二十代前半と見受けられた。
すらりと伸びた細く、しなやかさを感じさせる長い足。その脚線美をくっきりと表す細めのパンツを履いている。伸縮性もありそうだ。運動的なことが伺える。
対象的に上半身は少し袖が余った全体的に大きめのシャツ。そこから見える青がかった髪は短く、表情は微笑んだような顔をしていた。
しかし、灰色の目には眼光が宿り、警戒心していることを感じさせた。
これは…怯えているのか。これ以上怖がらせても仕方ない。ここは安心材料を一つぐらいくれてやろう。
魔王は怒りを堪え、眼前に現れた小動物を警戒させまいと努めた。
「わかった…ほら、これでよかろう。で?お前は何者だ」
「協力ありがとうございますー。えっと、私はこの辺りの活動地点に生活してましてー、勝手にウチのシマで暴れてる奴いるみたいなので駆けつけたんですけどー」
「ほう。それは悪いことをした。お前『達』のお目当てはこの獣か」
少し、女の頬がヒクリと動いた。『ウチのシマ』。失言をしたと思ったのだろう。
しかし、魔王からすれば女が一人で来ているわけではないことは明白だった。警戒している者が準備もなく表れるはずもなく、彼女の目線は魔王だけでなくその背後にも及んでいた。つまり少なくとも魔王の背後には何か居るか仕掛けている。
「目当てがこいつならくれてやるが」
「…ありがとうございますー。ですが、それはできないんですよー」
「ほう?理由は」
「その前に。こちらが自己紹介をしたのに貴方がしないというのはおかしくありませんかー?」
「なるほど。その通りだ。と、いっても名乗るほどの名はもうない。好きに…いや、魔王とでも呼んでくれ」
「…魔王」
「あぁ。魔王だ」
「……では、魔王?様。あなたは何の目的でこの場所に?」
「目的も何もない。気が付いたらここにいたのだ」
女は小さくため息を吐く。そして魔王に対し、こんなことを述べた。
「では警告をー。あなたはここにいても生き残れません。とっととここから失せて下さい」
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