第8話 新しい道を
「どうだった、別の世界の魔剣は?」
フィッフスはゆっくりとした足取りで階段を登りながら、シホの背中に訊ねた。
アイラとサロメは、また会う約束を告げると、地下空間の闇の向こうへ去っていった。時間制限はその時々で変わるが、今回は過去三回と比べると、ずいぶん長くこちらにいたようにフィッフスは思う。回数を重ねれば滞在時間は伸びるのか。興味深い研究対象だ。
「ええ。アイラさんの力を感じられたことは、とても嬉しく思いました。あれと根本を同じくするものが百魔剣にも込められているのであれば、フィッフスさんのいう通りなのかもしれません。」
シホは振り返らない。きっと彼女なりに思うところがあり、いまは懸命に思考しているのだろう、とフィッフスはその小さな背中に思う。彼女は貴族のような学習は施されてはいない。だが、考える力には長けている。
「百魔剣も、善意に基づいて作り出された。だとしたら、全ては使うものの精神次第。」
「まだ、わからないけどねえ。少なくともあたしはその論法で研究を進めてみたいと思っているよ。」
ラトーナ。あんたが見出だしたのは、間違いなく聖女だよ。でも、多少無茶をさせたんじゃあないかい?
フィッフスはシホの背を見つめながら、かつての旧友に心の中で話しかけた。フィッフスは姉と慕ったが、相手は友と呼んだ。
この子はまだ考える。そして考え、学ぶことで、あんたが目指したものとは違うやり方を見出だすかもしれない。あたしはそれに賭けたいと思うよ。
「フィッフスさん。」
「ん、ああ、なんだい?」
「この地下では、他の方にも会えるのでしょうか。」
「他の方?」
「ええ。他の方。他の魔力を宿した方々。様々な世界の。」
「そうさねえ……」
シホは振り返らない。しかし、その表情は話し声から、フィッフスには正面から向かい合って話しているようにわかる。好奇心の塊のようなシホの、淑やかな笑顔が、満面に輝いている。
「こればかりは、この世界の神さん次第だねえ。」
フィッフスは笑った。この子は必ず見つけ出す。誰にも見つけられなかった道を。フィッフスの笑みは、その希望に満ちた笑顔だった。
ー魔剣問答ー END
お借りしたキャラの出典:
『どりぃむ☆IN☆ドリーム』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887609022
作者様: 御剣ひかる 様
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