第13話
まずは調べなければいけない事がある。対戦相手だ。戦う相手の情報はなによりも優先される。得物、癖、性格、なんでもいい、些細な事も見落としてはいけない。敗北は許されないのだから。
今日は制服ではなく、ローブに身を包む。少し着て無かっただけなのに懐かしく感じる。環境がガラリと変わったからだろう。
普通なら向かうのは貴族街を抜けた下町だ。王国に仕える戦士の情報ならば、王国に仕えてる者達に聞くのが手っ取り早い。憲兵の仕事終わりに酒場で情報を集めるのが無難だろう。しかし問題がある。
顔が割れる事だ、これは好ましくない。何があるかわからない以上は警戒しすぎて悪い事は無い。
ならやる事は一つ。関係の無い人間を使うしか無い。生活に困ってる者を使うのが1番楽だ、彼等は生きるためになり振りかまって居られない。
ついた場所はスラム街だ。王都と言えど存在する。いや、目の前に広がるスラムの規模は今まで見てきたスラムよりはるかに大きい。人が増えれば増えるほど規模は増すとゆう事なのだろう。
ローブの内側から買った仮面を取り出しつける。何年ぶりだろうか。いい思い出など何一つ無いが親しみが不思議と湧いてくる。
スラムを進み辺りを見回す。今にも倒壊しそうな木造建築も多く、衛生面も最悪だ。ちらほらと力無く倒れて動けなさそうな人間もいる。
複数の視線が俺に向けられている。隠れて俺を伺ってるようだ。気にせずに歩き続けていると、数人は諦めて気配が消えていく。そなか1人の女が姿を表す。
「お兄さん?お姉さんかしら?」
「なんのようだ」
「お兄さんね、どう?安くするわよ」
「生憎、女を買いに来た訳じゃない」
女に向かってコインを弾く。
「まいど、それで何をお望み?」
「頭のいい子供が欲しい」
「男?女?」
「どちらでも構わない」
「ついてきて」
女に案内されついていくとオンボロの建物に入り声をあげる。
「マリアナ! お客さんよ」
その声に反応して現れたのは俺より少し歳下の女だ、要望通りその体は一般の平民となんら変わらない肉付きをしている。
「何? 体なら売らないて言ってるでしょ」
「わかってるわ。別件よ」
そうして初めて俺に視線が向けられる。
「見るからに怪しい」
「そんな事言って仕事を選ぶのは貴方ぐらいよ。じゃ私はこれで帰るわね、お兄さんまた何かあったら私のとこに来てね」
そう言って案内人は手を上げて消えていった。
「情報収集を頼みたい」
「なんの?」
「ルグニスカ学園で第三王女と公爵令嬢が決闘する、その代理人とプロフィールを調べてくれ」
「報酬は?」
腰に括り付けた小袋を渡す。中身は高額とまではいかないが十分だろう、こう言った手合は多すぎても警戒される。
マリアナは中身を確認するとうなずく。取引成立のようだ。
「情報収集に必要なものがあればなんでも言え、用意する」
「わかった」
「連絡手段はあるか?」
「スラムの入口に倒れそうな木がある、なにか分かればそこに布を括りつけておく」
「わかった、朗報を待ってる」
◆◆◆
次の日、念のためスラムの入り口を確認し行くと、予想に反して目印の布が巻かれている。なんらかの報告があるのだろう。
記憶をたどりマリアナに出会った場所に向かう。今回は誰にも絡まれずに辿り着く事が出来た。建物に入り「マリアナ」と声をあげる。
「いらっしゃい」
「それで、なんの報告だ?」
「王女側は調べ終わった」
「早いな、精度は間違いないんだろうな」
「間違いない、裏もとった」
想像以上に優秀な女のようだ。こんな廃れた世界に女一人でここにいれる時点で特別である事は間違い無いのだろう。
「教えてくれ」
「第三王女殿下の代理人はマルベスク・ロンデニュー。王国筆頭の戦士」
王国筆頭の戦士? そんな馬鹿な話があるのか。英雄の中の英雄じゃないか。
「……それは間違いないのか」
「間違い無い、憲兵達の中でもかなり話題になってた。念のため別経路でも確認した」
何の冗談なんだ、なぜそんな人間がわざわざ学園の決闘なんかに首を挟む。
「なんでも本来代理人になる人間を押し除けて、無理矢理なったみたい」
「なぜそんな英雄が首を挟みにきた?」
「なんでも英雄の息子が第三王女殿下の側仕えらしい」
あのバンデスて男か! 湧き上がる苛立ちが抑えされない。あり得ない障壁だ。英雄相手にお互い見合って勝てるはずがない……。
「その男の情報はあるか?」
「マルベスク・ロンデニュー。男、歳は38。ロンデニュー家次男として産まれる。幼い頃から王国軍に入り、その武勇ですぐさま出世するも、その性格は扱いずらく、上の命令を無視し降格する事もしばしば、酒と女をなによりも好む。妻との間は冷え切ってるみたい。
戦場での得物は魔鋼鉄の剣、80㎝ほどの両刃剣で、刃こぼれがしない事から、アルムダイトが使われてるて噂。
身長は180ほどな大柄、顔はごつく、顎髭を携えてる、髪は黒色で目は細い」
スラスラと情報が流れてくる。一日で調べた情報量じゃない。このマリアナて女は情報屋なのかもしれない。
「それでどれほど強いんだ?」
「戦場で負けなし、王国も素行の悪さに目を詰むてまで彼を囲っている、あの男に勝てる人はこの国には数人しか居ない」
「私生活はどうだ、酒と女が好きなら王宮に篭ってる訳では無いんだろ?」
「あの男は娼館に通っている、行かない日は無い。通の店は一等地にあるローションパラダイス⭐︎ビバ。情報はそのぐらい」
想定していた最悪の状況だ。今すぐに頭を抱えて蹲りたい気分だ。
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