第28話 四属性以外の力
そして、冒険者ギルド本部。嘉武とイヴは教壇のある部屋に座らされていた。
周りに居るのは顔が非常に整ったキノコ頭の男や黒魔術を使いだしそうな女の子に、嘉武やイヴに挨拶をしてきた明るい少年。名前はミルシスと言うらしい。
他にも冒険者は居るのだが、キノコ頭の周りに座ってしまった嘉武達の周りには人が寄り付かない。
嘉武がチラチラとキノコ頭を見ていると、ミルシスが「そこの毒キノコには気をつけろよ」とコソッと教えてくれた。恐らく、そういう事なのだろう。
どうやら、彼等はグランディア学園の生徒達だった様だ。
嘉武もこの数日で知った事だが、グランディア学園出身の冒険者は手厚い庇護の元、華々しい冒険者デビューを送ることが出来るらしい。それにも条件があり、どうやらSクラスやAクラスの者のみ。なので、周りに散らばっている冒険者達は殆どグランディア学園Aクラス出身の者であることが理解出来る。
そして教壇に立つ男が発した途端、部屋の空気が一瞬で締まる。
「俺は、ディオーネ王国冒険者ギルド本部長のリダズ・ヴィザラムだ。本日、ここ居る者達は皆、ディオーネ王に認められた精鋭であるという自覚はあるだろうか。これより、一般の冒険者とは画する実力を認めた上で演習に励んでもらいたい。それぞれの結果は冒険者ランクに反映はしないが、今後に置いては良い材料にはなるだろうな」
簡素な挨拶を終え、退室するリダズ。
後から入ってきたのはスーツをしっかりとを着こなす女性と少しナヨナヨとした男性。
「私はここで本部長付きで秘書をしているルナフィだ。これから行うテスト等は私に質問するといい。そして、こちらが補佐のロビンだ」
「ロビンです、よろしくね」
それから、テストを受けるにあたって演習場へ呼び出されたのは六人だった。
先程見た三人の他に大柄な単発の男。赤い髪をしていて、唯一のAクラス出身の冒険者。
分かったことは冒険者ランクのボーダーが10以上の者達がこの場に集められているらしい。
そして、ロビンが用意したのは小さな子供程の大きさがある水晶玉。イヴが呟く。
「クリメタボールね・・・」
ロビンからの説明の後、順番に力を入れていく冒険者達、名前を呼ばれていく。
キノコ頭のモルオス、黒魔術を使いそうな女の子はネア、続いてミルシスにガウズ。
彼等はクリメタボールの扱いにも慣れていて、それぞれ得意な力を発動してクリメタボールへと流し込んだ。
嘉武から見て仕掛けは全くをもって謎だが全ての力を飲み込んでいるように見えた。その中でも特出して強い反応を見せたのはネア。ブツブツと呟きながらロビンへ眼差しを向けていた。
「ヨシタケ君」とロビンに呼ばれ、クリメタボールへ手を翳す嘉武。使い慣れている火や風魔法を発動し、深紅、深緑に染めて行く。
周りからはザワザワとした声が聞こえる。
「これってどれだけ力入れていいんですかね」
「んー、出し切るつもりでやってみても大丈夫だよ」
「そうですか、ならやりますね」
ブヮァァアァアッ!!
クリメタボールはザラザラの灰色を発現し、ビギギギと異音を放った。
「止めてヨシタケ君!」
ロビンが焦って嘉武を静止した。
「あれ、もう少しだったんですけどね」と嘉武。その場から引き、ミルシスに絡まれる。
「何だよさっきの属性は?クリメタボールに使えるのは基本四属性だぞ?」
「そういうことでしたか、初めてなもので」
「・・・説明があっただろうが、それにしてもあれだけの力はあまり見ないな。もしかして魔法メインだったりするか?」
「まだ、僕のスタイルは確立してないけど、魔法はあまり得意じゃないかな」
「そうだったのか。多分、あれだけの力持ってりゃ魔法使いとしてもかなり良いとこまでいけるぜ」
そういうミルシスの得意分野は武器全般らしい。魔法は補助を得意としていると言う。自己完結しそうな性能だと嘉武は思った。
そんな中、イヴが嘉武よりも鮮烈にクリメタボールを変色させていた。四原色を発し、満足そうに手を下ろす。
「こんなものかしらね」
嘉武はこんなもので何がわかるのだろうか、と疑問に思うがこれより各個人の持つ魔力量や発動力の強さ、適性検査が可能らしい。
それと、実ステータスとの乖離も普通に見受けられるのでクリメタボールを使うと化けの皮が剥がれる様になっている。つまり、本人時代の性能が計られるという事。そして、各個人の能力はギルドの本部内で管理される。
その実力を鑑みた上で適正な依頼が舞い込むことがある。
グッバイ現世、僕は異世界で最強になる。〜才能が全ての世界をヘタレ冒険者が押し通ります〜 アキタ @akitawa
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