第12話 囮調査開始
夜、嘉武は一人で裏路地を行く。各所でのフォローは有るものの、完全に囮捜査だ。目当てのガヴァルドは居ないものの、変なヤツは多い。わざわざ喧嘩を吹っ掛けて来ないから良いものの嘉武は多くの眼光とジャンキーな雰囲気に引っ張られ緊張と恐怖で動きが硬い。
(皆、僕を獲物かなんかだと思ってるのか・・・)
ビビってんじゃないわよと影からあざ笑うイヴ。緊張の色はない。嘉武から見える範囲に居るというのにイヴの存在に気づくこと無く裏路地を歩く。
仕方の無いことなのだが、嘉武が往く人来る人をチラチラ見るものだから全員がガンを飛ばし、圧力を掛けてくる。その度、へらへらと笑う嘉武。どうしても人間の根本はそんなすぐに変わらない。
すると、路地に座り込んでいたトカゲ風の男がおもむろに立ち上がり、嘉武に声をかける。
「お前、こんな所でキョロキョロしやがって気持ちわりいんだよ。何の用だ?言ってみろ」
「お、っと、えーっと、ガヴァルドって人を探しています。知りませんか?」
「お前みたいな小せぇのがまたガヴァルドに何の用だよ。あんなヤツに首突っ込むのはやめとけ?最近じゃ完全にグレちまったって話だ」
「大切なモノを盗られてしまって・・・」
「それなら冒険者や自警団にでも依頼するんだな、正直俺たちだってあいつらが暴れてくれてるおかげで商売になんねぇ。さっさと出て行ってくれねぇかと皆言ってるぜ」
トカゲ風の男は話せば意外と良い人で嘉武は不思議とこの雰囲気にも慣れてきた。どうやらガヴァルドは同業者と言って良いのかはわからないが、同じゴロツキの中でも手を焼く存在であることが理解できた。最近ではかなりのシマを勝手に荒らしているらしい。完全にグレているというのはきっと『ロータス』との関係を意味するのだろう。何か、後戻りできないような事になっていなければ良いのだが。
(ガヴァルド・・・初めて出会ったのはもう少し先だ。行ってみよう)
嘉武は更に奥へと進む。ガヴァルドに再び会うために。
その裏では、イーミルがガヴァルドの下っ端を確認していた。そしてイヴへと報告。大体の居場所がわかったと同時にガヴァルドも嘉武の情報を集めていたようだ。敵意を持って即発するだろう。イーミルはそのままハインの元へと駆けつける。
報告を受けたハインも周りから人を遠ざけ、表を封鎖し待ち構える。そこにはユーリ、オルディスの冒険者が何人も待機していた。
「こっちは完璧な布陣だ。後は頼むぜ囮役」
ハインは空へと言う。
エルガーの元へは伝令が行く。ご苦労の一言で伝令は元の場所まで待機に向かう。
「・・・ガヴァルドのヤツも、動いたか」
エルガーはゆっくりと目を開き、額をピリ付かせた。
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