第10話 魔石の価値
嘉武はオルディスに到着し、ギルドを訪ねていた。そして現在、嘉武はオークから取れたコアを三つ確保している。コアとは魔力源であり、生活魔法やモノの加工等様々な用途に使われたりする。
「シルフィさん、これってどこかで売れたりするもんですかね。売れるならできるだけしっかりとした所で売りたいんですが」
「もしかして、魔石ですか!?一体どうしたんですか嘉武様!?」
「えぇ、まぁ。森へ探索しに行ったのですが弱っている魔物が居た所をこの剣でね。しかし、早速素材にありつけるだなんて運が良かったとは正にこのことですかね」
「そ、そうですか。ですよね、それでも嘉武様はまだ冒険者としての経験が浅いんです。あの森は危険ですよ。好奇心があるのもわかりますが、探索するにも十分気をつけてくださいね」
多少のお叱りを受け、嘉武は素材の買取を行ってくれる買取屋を教えて貰った。大体の想像はついていたが、オルディスの街に入ってすぐの素材買取所が一番安定した相場らしい。ルーキーは皆そこで売買を行っていると教えてくれた。
「もっと素材が持ち運べればお金稼ぐのも簡単なんだけどなぁ。次元を活用した収納とか便利なものとかあったりしないもんか」と嘉武は街を歩きながら考える。試すだけ試して見たものの嘉武が思うほど次元収納は甘くなかった。オークを倒した時に一度試したものの、木々が勝手に瓦解し、時空の裂け目に沿って様々な物がズタズタに千切れるばかりだった。嘉武は不器用であることから、今はまだ次元収納が使えそうにない。憧れの魔法だが仕方なく、魔石だけでもと回収したのだ。
そして、オルディス随一の買取屋に到着する。高価買取中の素材などが張り紙などで知らされていて、売却に来た冒険者で賑わっていた。
どの冒険者も大きな荷物を重そうに持ち運んでいる。中には数人掛かりで生きたまま捕獲した魔物等を持ち込んでいる冒険者達もいた。それに、査定士も数人居てフル稼働だ。
様々な売買が行われているみたいだが、買う時は割高になるのはご愛嬌。そもそもここでの買取品は武器防具の作成、アイテム加工等をするために様々な商店へ卸していたりするからである。
「すいません、これの買取お願いします」
「おや、これはなかなか良い魔石だね。この辺りで採れるものにしちゃいい大きさしてるじゃないか」
(僕には価値がさっぱりわからないけどね・・・)
「結構状態も良いし一つ2000マーニで買い取ろう。どうだい?」
(串焼き肉20個分かよ)と嘉武は思うが持っていて意味のないものは売る。
「はぁ、そんなもんなんですね。まぁいいや、お願いします」
「そんなもんって言ったって魔石だからなぁ、この辺で魔石持ってくる人なんてあまり居ないぜ?なんせ魔物が弱いから採れる魔石も小さい。この辺じゃあ、強くたってオークやそこらだろう。オルディンでは魔石は取り寄せてばかりだし元々そこまで高く買い取ってないんだよ」
「オーク、ですか。素材としては結構良かったりするんですか?」
「オークの本体は牙だぜ?そもそもこのへんでは個体数が若干少ないからな。あの牙を使って作る武器はなかなかの堅牢さを誇るって聞くほどだ」
(マジかよ・・・今から戻っても残骸残ってたりするかな・・・?)
「そ、そうなんですか・・・」
「兄ちゃんもオークを倒したんなら牙を忘れずに持って行くんだぜ!はいよ、これは魔石の買取分の6000マーニだ」
嘉武は6000マーニを受け取る。大銀貨6枚だった。
そして、そろそろすればギルドの待合でイヴとの待ち合わせがあり今日何をしていたか口裏合わせをする。もし、エルガー達に聞かれても良いようにだ。
ギルドへ着いてみると、すでにイヴは席に掛けて嘉武を待っていた。
「あんな遅いのよ。鈍臭いわね」
「てっきり遅刻してくるかと思ったよ」
「んで、今日は何かしてたわけ?聞かせなさいよ」
「あぁ、今日はオルディスを見て回って、また外に出た。今日は特に変なことはしてないから安心してくれて良いよ」
「なんかあんたから金の音がするんだけどその金はなに?」
(こいつ、どんな耳してやがる・・・)
「それは・・・」
「それは?」
「僕のお金だ。別にそれ以上でもそれ以下でもないね」
「はぁ~ん?嘉武君ったら怪しいわねぇ」とイヴはジロジロを嘉武の顔を見る。そんな嘉武は顔が引きつりそうになるのを抑え、切り返す。
「そんなことよりイヴこそどうしてたのさ」
「寝てたわよ。あんなと違ってオルディスに来るまで忙しかったから疲れていたの。まぁ天才の苦悩ってやつよ。わからないか、凡才だもんね。いや、非才だったっけ?」
イヴは嘉武を誂う。そもそも答える気がないのだろうと嘉武も悟った。
「何でも良いよ、何も無いならそれでも」
「あっそう」
ーーーこんなやり取りが三日続いた頃。日に日に増える嘉武のポケットマネーに毎回突っ込むイヴ。詳しく言及する気のない両者。そして、ハインやイーミルの調査が終了し、ガヴァルドの拘束作戦の用意が完了したとの報告を受ける。
この日も嘉武はイヴとの打ち合わせをしていた。
「いよいよ明日ね。チンピラ一匹、私がちゃっちゃとシバいちゃえばこんなに待たなくて済んだのにね」
「僕だってそう思うよ。けど、エルガーさんが動かざるを得ない、難しい事情でもあったんだろう」
「ふん、わかったような口聞いて、生意気ね」
「考えればわかるだろ天才」
「ぐぬぬ・・・」と少し悔しそうにするイヴに嘉武は少し微笑む。思ってみれば、異世界に来てからまともに話をする相手はイヴくらいしか居ない。三日もすれば嘉武もイヴの扱いには慣れてきて、普通に話せるようになっていた。
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