第4話 いざ、冒険者ギルドへ

 裏路地を抜けて広い石畳の道をただただ歩く。やはり、普通に街を散策している方が性に合っているようだった。段々と感じてくる空腹感と喉の乾き。思えば思うほど加速する飢餓感から思わず口にだす。


「あ~、腹減った~。喉乾いた~」

 すると、向かいから歩いてくる小さな娘が反応する。

「お兄ちゃん、大丈夫?何も持ってないの?」

「スリに合っちゃってね、だからこれからギルドに行こうと思うんだ」


 すると娘を連れていた母親が少し苦い顔をしながら言う。

「それはそれは・・・不幸でしたね。それとギルドへ向かわれうようですが、気をつけて下さい。あなたほどの若い子だと苦労をするでしょうから」

「そこのところ気にしてないです。お気遣いありがとうございます」

「そうですか、逞しいですね。次の分かれ道を右に行けばそのまま着くでしょうから、ゆっくりお休み下さい」

「がんばってね~」と娘が言う。


 それでは、と挨拶を交わし親子は行った。言われた通りの道を歩く嘉武はギルドへ着くまで思考を巡らせる。この世界におけるギルドはどのようなものなのかと。やはり、冒険者ギルドと言っても多少は荒くれた人もいるのだろうか。苦労をすると言われたが、何故なのか。そんなことより腹減った。と思考が中断されかけた頃、道を抜けて街の中心部に出る。辺りを見渡してみればギルドらしき建造物を見つけ、訪ねてみる。


(本当にここだよな?少し重そうな扉だけど、開けていいのかな)


 この世界に来てからまだどこかに入ったということも無く、妙な緊張感を覚える。それでも中から人の声が聞こえ、嘉武の背中を押した。


 ぎぃ、と開けた扉の向こうにはまさしくギルドの広間があり、冒険者一行が話し込んでいたり、飲食をしていた。思っていた通りのギルド内部に嘉武は心を踊らせキョロキョロしてしまうがイカンイカンとすぐ我に返る。そんな観光気分の少年を若い受付嬢がクスクスと笑いながら見ていた。


「ここは、冒険者ギルドで合っていますか?」

「ここは、冒険者ギルドですよ。どうかされましたか?」

 受付嬢は小気味よく答える。

「野宿の最中置き引きに遭い、持ち物を全て無くしてしまったんですけど・・・」

「それでは、冒険者への”依頼”という事でしょうか?」

「いえ、門番さんから聞いて取り敢えず相談しに来た感じです」

「それはそれは、少しお話を聞いてもよろしいでしょうか?」


 嘉武は受付でこの世界に来てからのことを一部改変し、話しをした。それと、自分で金を稼いで生計を立てて行くにはどうしたら良いのか相談をしてみた。そうこう話すこと数十分、嘉武は冒険者登録を行い、支援金をギルドから借りて当面生活していく運びとなった。


「本当災難でしたね・・・田舎村から上京している最中に全て盗られてしまっただなんて・・・」と受付嬢は嘉武のホラ話を親身に話しを聞き、一時涙を浮かべていた。


「それでは、少し手続き等に時間がかかりますから食事は向こうにある食堂で摂って下さい。代金も支援金の一部としておきますので。それと今日のところは併設されている宿がありますからそちらへ宿泊してもらって良いですよ。あ、それも支援金の(ry」

「何から何まで助かります」

 と腹をすかし、借金の話しなど聞きたくない嘉武は礼を済ませる。


 嘉武は欲望のまま意外と美味しいギルド食堂の飯を食い、すっかり夕方。椅子に持たれてぼーっと一日を振り返る嘉武。時間も時間でギルドは依頼達成の報告者などが多く帰還しておりその中にも同年代の少年少女は意外と多く皆活力に溢れている。皆の鎧や武器かっこそれに比べて(僕の格好・・・貧相すぎやしないか?)と疑念を抱いた。そして、初期アバ装備の場違い感による視線が妙に辛かった嘉武はギルドを後にして宿へ向かった。


 宿へ来てみたら話は通っていたので説明の手間も省けスムーズに入室。流石はギルド併設だった。

 宿へ来たからと言ってすることもない嘉武は共同浴室で入浴を済ませ、寝床に横たわる。多少の疲れを感じる嘉武はこのまま寝てしまおうかと考える。


(今日は早く寝て、明日朝一でギルドへ行って装備品を集めよう。防具は高くて買えないだろうし、まずは武器からかな。そういえば魔法とかも使えるのかな、試しておけば良かった。あと、必要なものは、)


 ーーー嘉武はそんなことを考えているうちに眠りについた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る