書き出しと締めの文

 久々に創作論を思いついたので書き記しております。

 今回から「醤油取って」のくだりで始まる例文を撤廃しようと思います。必ず例文を使用するというのは思いのほか、書きにくい。また今後は章題でもある「好きな表現について」語っていこうと思います。私個人が気に入っているという、多少ふんわりとした論調になるかと思いますが、ご容赦ください。


 では本題に入っていきます。

 今回は物語の始まりと終わりについてです。

 多くの方が様々な形で創作論・評論を語る中で、「つかみが良い」「序章からひきこまれる」といった始まり方について述べたもの、もしくは「オチが秀逸」「結末に感動」といった終わり方について述べたものをよく見かけます。

 私自身、書き出しというのは非常に気を付けながら書いております。読者においては、どのような冒頭文であれば物語に興味を持ってもらえるのか、日々模索しております。そして書き出しと同等かそれ以上に推敲を重ねるのが締めの文です。ときには「あ、こんな締めで終わる小説書きたい」と最後の一文だけが思い浮かんで、それに合わせた物語をひねり出すときもあります。


 小説において書き出しという一節はしばしばクローズアップされます。超有名どころをあげるなら「雪国」や「走れメロス」、「吾輩は猫である」などは多くの人がその序文をそらんじることができるでしょう。書き出しがそのまま作品の顔となり、代名詞となっているのです。その重要性を今更ながらに語るのは控えることとします。しかし締めの文というと、こちらは序文ほどには、とりあげられることが少ないように感じます。なにかと目にするのは「羅生門」くらいでしょうか。しかし読後の余韻を決定する大事な要素です。ここが印象的であれば読者の作品への評価はより良いものになるでしょう。「小説の最後の一文は?」と聞かれると一つくらいは思い浮かぶこともあると思います。私は「イリヤの空、UFOの夏」のそれが自然と出てきました。懐かしくて、思い出した私自身が驚いています。

 

 そんな中、気にいっている序文と締めのカタチがあります。

 それは両者が対応したものです。

 締めの文が書き出しを準拠している、ないしは対の句になっている。クエスチョンをていしたのであればアンサーを示している。

 そのようなカタチがとても好きです。

 私個人の感覚として「タイトル回収」という言葉が近いかもしれません。最近は小説の「タイトル」がキャッチーな序文を兼ねているものも多いですから。

 

 起承転結における起と結は、それぞれ問題提起と結論という側面も持ちます。

 物語において一貫性のある「問い」とその「回答」。

 それはまさしく作品のテーマといって差し支えないものになるはずです。書き出しと締めの文にそれが示されていると、一つの物語を読み切ったという気持ちにさせてくれます。バッチリとした解答を示さないというものも、それはそれで構わないでしょう。たとえば書き出しと全く同じ文章が締めの文として記載されていたとします。物語を読み終えた読者にとって、同じ文章でもその受け取り方はまた違ったものになるはずです。

 

 とはいえ、必ずしもそのようなカタチにすることはありません。

 と言いますか、そうそう上手くはいかないです。

 

 小説の執筆とはまるでイキモノのようにおぼつかないモノです。書き進めるうちにとっちらかり、アチコチに内容が飛散して、収拾がつかなくなることはままあります。たとえ序文と結末が定まっていたとしても、そんな状態で終始の都合をつけたら出来あがるのはチグハグな何かです。よって書き出しから最後まで綺麗におさまった一つの作品というのは、それだけで素晴らしい。難なく行える方がいればすごいと思います。私もそんな卓越した構成力が欲しいこの頃です。すでにこの「『創作』の話をしようじゃないか」自体、構成としてはダメダメちゃんです。


 今回「書き出しと締めの文」という議題をするにあたり、簡単に創作論や評論、ノウハウ講座などを検索してみたのですが、驚くくらいに書き出しについてしか触れられていません。「始まりはこう書け」といったものは多く論じられているところですが「終わりはこう書け」というのは、ほぼほぼ見かけません。

 理由は色々と推察できますから、仕方ないとは思います。思いはしますが、やはり個人的には終盤においても丁寧な作品が好きだなと思います。終わり良ければ総て良しとはよく言ったものですが、終わりを良くするのが最も難しいことなのかもしれません。私も精進したいと思います。


 次回は構成について語ろうかと思います。起承転結とは何たるか。素人考えながらに考察していこうと思います。

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