第12話

ちえちゃんさんの話では、美人過ぎるオオカミ騒動のおかげで、キョーコさんがサンデーサーカスの動物たちを探す旅の連載を始めたそうです。その第一回目の記事が、私。牧場のみんなと一緒の写真や、キョーコさんやメリーさんと一緒の写真も雑誌に載っていると、ちえちゃんさんは教えてくれました。


「サンデーサーカスのヒツジは、がむしゃらに頑張ることを私に教えてくれました。あの時、真っ黒になってスケートボードに乗るヒツジに会わなかったら、私はモデルになることをあきらめていたと、今でも思っています。・・・スゲーなーキョーコさん。オレなんて、同じ光景見ても『どんくせーな、このヒツジ』って思っちゃうけどね」

「おれも。いつもそう思ってる」


山田さんの言葉に、モー太郎さんがうなずきました。


「キョーコさんが素敵なのは、シープちゃんのことだけじゃなくて、他の動物たちや私たちのことも、ちゃあんと紹介してくれているってところですよね!記事読んで、ますますファンになりました」


ちえちゃんさんがうっとりとした顔で言いました。


「おれ、思うんだけどさ。一流の人って気遣いが違うよね。こちらに気を遣わせないように気を遣ってくれるっていうかさ。さりげない気遣いに尊敬するし、ファンになっちゃうよね。自分はエライ立場にいるんだから、お前ら気を遣えよっていうヤツって、人間でも動物でも三流以下だね」


山田さんとちえちゃんさんがキョーコさんの話で盛り上がっていると、牧場主さんが大きな声で山田さんの名前を叫びながら走ってきました。


「来た来た。なんで勝手に写真撮ったんだって、怒るんだろうな」


山田さんはそう言うと、ゆっくりと立ち上がりました。


「山田ぁ!」


私たちのところに来た牧場主さんは、疲れたのか、ペタンと座ってしまいました。


「頼む・・・。お千代に、・・・断りなく写真撮ったことを謝ってくれないか」


牧場主さんのお願いに


「はあ?」


山田さんの声と


「えーっ!」


私たちの驚きの声が重なりました。

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