第11話
「どういうことですか!」
体の毛皮が蒸し暑く感じるようになった頃、昼休みに外で山田さんたちとおしゃべりをしていたら、事務所から牧場主さんの大きな声が聞こえてきました。
「あの日、取材は中止になりましたよね?おたくの一方的な都合で取材は中止になったのに、どうして、おたくの雑誌にうちの動物とスタッフの写真が写っているんですか!」
「あー、あれかぁ」
山田さんはそうつぶやくと、ちえちゃんさんに
「オレ、写真撮る前に社長に言ったよね?キョーコさんが連載している雑誌にこの牧場の動物とスタッフ全員の写真を載せたいと言っているって」
と、聞きました。ちえちゃんさんが小さくうなずくと
「社長と、そこの黒い犬も一緒にいかがですかって誘ったら、社長は『勝手にしろ!写真撮りたきゃ好きに撮れ』って言ったんで、社長と飼い犬抜きで写真撮ってもらったんだよ。勝手にしろって言っておいて、今頃になって文句言っても、なー」
山田さんは、ため息混じりに話を続けました。
「雑誌に、この牧場のことが紹介されてから、牧場の見学者が増えましたよね?まあ、夏が近づいてきたせいもあるんでしょうけど」
ちえちゃんさんの言葉に、山田さんは大きくうなずきました。
「気候のせいもあるんだろけど、記事の影響は大きいと思うぞ。さっき、サンデーサーカスにいたヒツジって、寝そべっているヒツジですか~って聞かれたもんね」
「めめめ!」
みんなが一斉に笑いました。
「アタシ、雑誌で見るより実物のほうが可愛いって言われた~」
象の花子さんが言うと、モー太郎さんが
「写真はいくらでも加工できるからね」
と私に言いました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます