第4話
「あのー。あ!青山さんに渋谷さん!」
色白で髪を束ねた女性が子羊が1匹入りそうな大きなカバンを抱えて待合室に入り込んできました。
「ちょ、ちょっと!あなた!突然、なんですかっ」
牧場主さんが女性を呼びましたが、女性は牧場主さんに気がつかず、男性二人にペコペコと頭を下げていました。
「申し訳ございません!クイズ番組の収録が30分ほど長引いてしまいまして!これから、すぐに支度いたしますので!」
「いやいやいやいやいや、もういいんだ、アサイさん」
「今日の撮影は中止ですよ」
「え?中止?」
色白の女性と牧場主さんが声を合わせて驚きました。
「中止ってどういうことだ!」
「そんな・・・中止って」
牧場主さんと色白の女性が、ほぼ同時に叫びました。
「遅刻のことは、マネージャーの私が謝ります!ですので、なんとか!」
色白の女性が、さらに大きな声を出して2人の男性に頭を下げました。
「遅刻が理由じゃなくて、今日は、どうしても、撮影ができないんですよ」
「アサイさんのせいじゃありませんよ。こちらの・・・ねえ」
「ねえ・・・」
男性二人はそう言ってお千代さんを見ました。
「シモノツケ、今日の仕事、すっごく楽しみにしてたんです!この仕事のために、着付けの練習したんです!旅行雑誌たくさん集めて、入浴シーンのポーズも考えたんです!ほ、ほらほら。見てください。これがポーズの図案です。あ、入浴シーンがダメならば、せめてっ、せめて…シモノツケの着物姿だけでも、撮っていただけないでしょうかぁ」
色白の女性は、男性二人がお千代さんのことを見ているとは知らずに、何度も頭を下げながら、二人の男性に謝っていました。二人は困った顔してお千代さんを見ていました。
「アサイさーん、どこで着替えればいーい?」
「キョーコちゃん!あなたからも、青山さんと渋谷さんに謝って!あなたが漢字問題で3回連続NG出しちゃったから、収録が30分延びちゃったんだからね!」
知らない間に、ふわふわした茶色い髪の毛の小柄な女性が待合室に入ってきていました。色白の女性が小柄な女性を叱りつけると、女性たちは一緒に男性二人にお辞儀をしました。
「ちょっと!あなたたち!なんですか!勝手に事務所に入ってきて!」
牧場主さんが、女性たちに怒鳴りました。女性たちは、初めて牧場主さんの存在に気づいたらしく、「うわぁっ!」と大きな声を出して驚きました。
「あ、あ、あ、あ、これは大変、失礼しました!渋谷さん、こちらが旅館の?」
色白の女性は牧場主さんに頭を下げました。続いて髪の毛が茶色い女性も頭を下げました。
「社長さん、こちらの女性はね、今日の取材のインタビュアーだったんですよ」
サングラスの男が茶色の髪の毛の女性を指しながら牧場主さんに言いました。牧場主さんは小さな声で「は?」と驚きました。メガネがちょっとずれました。
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