第3話

ゾウの花子さんが雑誌社の人を見たいと言うので、私たち宿舎の動物は待合室へ行きました。お昼休みは終わりましたが、お客さんがいないので私たちは外に出て仕事をする必要がなくなりました。待合室の隣に私たち動物が待合室の様子を見ることができるための部屋があります。私たちと山田さん、そしてちえちゃんさんがその部屋に集まりました。


「どういうことですか?説明してください!」


黒い帽子をかぶった男が、牧場主さんに言いました。サングラスをかけているので、顔はよくわかりませんが、牧場主さんに怒っているように感じました。


「ですから、それは、そちらの聞き間違いであって、こちらはきちんと説明しましたよ」


牧場主さんはゆっくりと黒い帽子の男に答えました。牧場主さんの隣には、お千代さんがつまらなそうな顔で座っていました。


「ホントに、オオカミの取材だったんですね」


ちえちゃんさんが山田さんに言いました。


「女性誌の記者がさ、電話を受けて、美人過ぎる女将だと思ったのは当然のことだと思うね。美人過ぎるって言ったら、フツー、人間のこと指すじゃん。動物だと思わねーよ。アイツは『オオカミ』と『女将』を聞き間違えるなんてありえないって怒ってるみたいだけどさ。オレにはアイツが怒ってることの方がありえねー」

「私だって、美人過ぎる女将だと思いました。まさか、オオカミだなんて・・・」


山田さんとちえちゃんさんの話を黙って聞いていたモー太郎さんと私に、キリンのきいちゃんが質問しました。


「どうして、オオカミが美人なんですか?」

「それは、アノ人が勝手に決めたことだから。キリンだって羊だって、自分が美人だと思ったら、美人だって言えばいいんだよ」


モー太郎さんは待合室をじっと見ながら答えました。


「じゃあ、こうしましょう!」


牧場主さんが急に明るい声で話し出しました。


「英語のビューティフルとウルフを合わせて、ビューティーウルフ…いや、ビューティルフ!」


サングラスの男の隣に座っていた背広姿の男がため息をつきました。サングラスの男がコーヒーを飲み始めました。牧場主さんが頭を掻きました。お千代さんが牧場主さんに


「早く撮影始めてくださいって、言ってくださいっ!」


と言いました。向かいに座っている二人の男性は


「ウー、ガウっ!」


というお千代さんのうなり声に驚き、背筋を伸ばしながら座りなおしました。





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