片想い

 大学へ向かう途中にあるコンビニで働いている男性。笑顔が素敵で、優しそうな男性。

 本当は話しかけたい、彼のことを知りたい、そう思っていた。でも、俺のことを知られると、また拒絶されるんじゃないか、そんな風に思って何もできなかった。あの日までは。


 アパートから外を見ると、彼が歩いているのが見えた。こんな夜遅い時間に、こんな場所で会えるだなんて予想外で、だから、俺は気付けば彼の元へと向かっていた。そして、


「この後、俺とどう?」


 そう話しかけていた。彼が頷いてくれたのが嬉しかった。だから、部屋に招こうかと思ったけれど、掃除をしていなくて汚いから、やめることにした。

 そして、公園の中心付近で彼と初めて身体を合わせた。初めてだと言う彼のために、少しでも痛くないように、優しく。

 全てが終わったあと、彼は放心していた。だから、俺は怖くなって、その場を逃げ出してしまった。


 それから、彼はたまに現れるようになった。何かを探すように公園の中をうろうろとした後、肩を落としていつも帰っていった。

 探しているのが俺であってほしい、そんな希望を抱いていたけれど、話しかける勇気は出て来ず、ずっと見つめるだけの日々が過ぎていた。

 そして、あの日からちょうど一年の今日。彼がまた現れた。あの日と同じようにベンチに座っている。だから、俺はあの日と同じように話しかけた。


「この後、俺とどう?」


 彼は俺を見ると、抱きついてきた。そして、予想できるはずもなかった言葉を口にした。


「俺と付き合って」


 嬉しくて、言葉を失ってしまったけれど、彼が本気だと分かった。どうしてかは分からない。けれど、俺の想いが叶ってしまった。


「……ありがとう」


 俺にはもう、そんな言葉しか出てこなかった。

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肉体関係から始まる新生活 星成和貴 @Hoshinari

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