一年後

 あれから俺は何度かあの公園へ行ってみたこともある。けれど、彼はいなかった。

 疲れて、変な幻を見たか、寝てしまっていて、その間に見た夢なんじゃないか、そんな風にも考えていた。けれど、あのときに感じた彼の息づかいや温もりは確かに覚えている。夢や幻だなんてそんな言葉で片付けられないほどリアルに。

 それでも、この一年、会うことはなかった。理由は分からない。だから、一年前と同じ今日、この時に会えなかったら、もう諦めよう、そう心に決めていた。

 あの日と同じように自販機で缶コーヒーを買って、ベンチで座って飲んでいると、突然声をかけられた。


「この後、俺とどう?」


 顔を上げると、彼がいた。俺は思わず、彼に抱きついてしまった。


「会いたかった」


 俺がそう伝えると、彼は困惑した様子だった。いや、困惑しているのは俺も同じだった。

 どうして、会えただけでこんなに嬉しいんだろう。彼の温もりを感じるだけでドキドキするのはどうしてなんだろう。

 いや、答えなんて分かりきっている。俺は、彼に恋をしている。たった一度、身体を合わせただけの彼に。

 だから、俺は勢いに任せて彼に伝えた。


「俺と付き合って」


「え?」


「だから、あれからお前のことしか考えられなくなったから、俺と付き合ってほしい」


「その、俺でいいの?」


「お前とじゃなきゃ嫌だね」


「……ありがとう」



 こうして、彼女いない歴=年齢だった俺は念願の恋人ができた。思っていたのとは違うけれど、それでも、素敵な

 肉体関係から始まったけれど、この想いは決して、偽物なんかじゃないって少なくとも俺は思っている。彼もそう思ってくれてるといいけどな。

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