第7話 ゲーム実況を始めます
初配信を無事に終えて、さて次は何をやろうかなという話になった。咲季ちゃんは既に、次の予定を考えていた。
「ゲーム実況?」
「そう。配信サイトのメインコンテンツなんスよ。他のバーチャルキャラクターも、とりあえずコレをやって視聴者に楽しんでもらうんッスよ」
「へぇ、そうなんだ」
そういえば、配信するにあたって事前に色々と調査している時に見た記憶がある。バーチャルキャラクターを画面の右下に映しながら、ゲームを楽しそうにプレイしていた。あれが、動画配信サイトのメインコンテンツということなのか。
「普通にゲームするの?」
「いいえ。ただ普通なだけじゃ、面白くないッスよ。耐久をやりましょう」
「耐久?」
「目標を立てて達成するまで寝ませんとか、配信し続けます、って企画ッス」
「なるほどね」
ただゲームをプレイするだけではなく、制限をかけてクリアを目指していくという咲季ちゃんの提案。なかなか面白そうだと感じたので、やってみることにした。
「目標を立てて、達成を目指すのは良いね」
「そうッス。やりましょう。実は既に、配信の許可は取ってあるッス。あとは楽しく配信して、クリアするだけッスよ」
「相変わらず、仕事が早いなぁ」
「任せるッス。真央ちゃんは、配信とゲームのクリア頑張るッス!」
ということで、ネットに公開している配信スケジュールに予定を書き込んだ。次は耐久企画を行うと発表。すると、すぐに様々な反応が返ってきた。
いきなり耐久企画に挑戦して大丈夫なのかを心配する声や、本当に最後までクリア出来るのか危惧するファンが多数。クリアできるように応援してくれているファンの声も、かなり多かった。
とはいえ、やるかどうか決めるのは私たち。やってみたいと思ったから、挑戦してみる。周りからの忠告は参考程度に留めておく。とにかく初のゲーム実況で、初耐久企画でクリアを目指して頑張ろうと思った。
「配信を開始する。画面、見えている?」
【キター!】
【始まった?】
【こんばんまおー!】
【オッケー】
【見えてるよ】
【声も聞こえてる】
ゲーム機を起動して画面に映した状態で、配信を始めて動作を確認する。カメラの向こう側でチェックしていた咲季ちゃんからも、問題なしの合図があった。ちゃんとサイトで配信出来ているか大丈夫なのかを確認して、耐久企画をスタート。
その名も、初プレイのゲームをクリアするまで寝れません。
「こんばんまおー! では。今日は、ゲームを実況していたいと思います」
視聴者の数が、スタート開始からいきなり1500人も来ていた。それだけ多くの人たちにゲームをプレイしている姿を見られている、ということだ。これは、かなり気合が入る。
「挑戦するのは、このゲーム。巷では超ゲキムズのゲームだと話題らしいな。これをクリアするまで妾は配信を止めずに寝ない、という挑戦をやっていくぞ」
【うわ、マジか……。そのゲームでクリア耐久をやるつもり、ってマジ……?】
【初のゲーム実況から無謀すぎるよ……】
【初プレイなの?】
【ゲーム実況が初だから、どの程度の腕前が有るのか楽しみ】
【クリアするのに、どれぐらい必要かな?】
【初プレイだとしたら、40時間ぐらいは掛かるかもよ】
【40時間もプレイしたら、死んじゃうよぉ……】
【それでもクリアするのに時間、足りないかもな】
【俺はステージ1を越せずに、即行で売りに行った】
【俺も】
【ステージ1で売るのは早すぎだろ。って言ってるオレも、すぐに売っちまったな】
【それクリア、無理じぇね?】
【無理無謀】
【寝落ちするに、1万円を賭けます】
【同じく】
【おなじくね】
アクションロールプレイングゲームというジャンルで難易度が非常に高いと評判。何度も死んでしまうだろうから、最後まで絶対に諦めず何度も繰り返し挑戦をして、クリア目指して頑張ってと咲季ちゃんにも言われた。
視聴者の数が多いから、入力されるコメントの数も多い。バババッと画面に流れるコメントの大半は、本当にクリアできるかどうかを心配する声だった。まぁ、仕方がない反応なのかな。
「普段から、あんまりゲームをしてこなかった。このゲームも初プレイだな」
言葉の通り私は、テレビゲームをプレイしたという経験があまり無い。けれども、絶対にクリアしてやるという気持ちは強かった。
【絶望】
【はい。ダメー】
【いや、クリア無理でしょ】
【なら、もっと無謀だろぉ!?】
【本当にクリアする気あるのか?】
【まぁまぁ、みんな落ち着け。プレイする様子を見てから評価しよう】
【途中で諦めて、終わるんじゃねぇの?】
【耐久(笑)にならないように願ってるよ】
「じゃあ早速、ゲームを開始しようか。……ん?」
ゲーム機に繋がっているコントローラーを手に持ち、ゲームを最初から始めようとした。すぐに、どうしたらいいのかが分からなくなった。画面にはスタートボタンを押すと開始する、と表示されているが。どのボタンを押せばいいのか。
「えっと、スタートボタンはどれ?」
手元に持っているコントローラを見て、ボタンの位置を確認する。パソコン画面に映っているバーチャルキャラクターも同じように、視線を下の方へ向けていた。
そんな様子が、バッチリと配信されている。
【[悲報]耐久挑戦者、ゲームをスタートできない】
【マジかよ。その程度のレベルなのか】
【手元を覗き込んでるのかな?】
【見た目は、カワイイ】
【はい。クリア無理です】
【視聴者が耐久、じゃねえか】
【可愛いけど、幸先が不安だよな】
【コントローラーに慣れてないんじゃ、クリアは駄目っぽいですね】
【期待度ゼロ】
【貴方が手に持っている、コントローラーっていう入力装置の真ん中にあるボタン。それが、スタートボタンじゃよ】
「分かった、ここのボタンね。どうもありがとう」
くっそー、悔しいぞ。誰も、最後までクリアできるとは思っていないようだった。初プレイのリアクションをするために、事前に全く練習をしていなかった。だから、分からないことも多い。けれど、絶対に諦めずに最後までクリアしてみせる、という気持ちに変わりはなかった。クリアして、コメント欄の奴らを見返してやる。
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