第8話 耐久企画

「なるほど。こうやって動かすのか」


 ゲームを始めて、チュートリアルを受けながら操作方法を一つ一つ覚えていった。キャラクターを操作するのに少し苦戦しつつ、敵との戦闘を繰り広げる。


【お】

【良いじゃん】

【ちゃんと説明を受けて、学習してる】

【そうそう、いい感じ】

【初心者らしいが、動きは悪くないぞ】

【なかなか、ゲームのセンスが有るな】

【お。さっきの攻撃を寸前で避けたぞ】

【うわっ。反応速度ヤバすぎない?】

【目が良いのかな】

【プロゲーマー並みの反応速度】

【一度覚えた操作、それから失敗していないのが強い】

【記憶力が良いんだな】


「こうやって、こう」


【ナイスゥ!】

【オッケー!】

【いい動き】

【いまのは、もう少し回避を早く意識すると良いかも】

【あまり突っ込みすぎないで、余裕を持ってね】


「なるほど。アドバイス、ありがとう」


 ゲームを進めながら操作方法の技術を磨いていく。途中、コメントのアドバイスを拾いながら動きを修正。敵の動きに合わせて避けたり攻撃するのは理解してきたが、コントロールでキャラクターの操作するのは、なかなか難しい。


 でも、クリア出来るような自信が湧いてきた。これは耐久で問題無さそうだ。


「あっ! やっちゃった」


 と思っていたら、ミスしてしまった。コメントがだんだんと操作が上手くなって、褒めてくれるようになったので少し浮かれ気分になった。


 操作をミスってしまい、ゲームオーバーの画面が表示された。ミスしてしまって、コメントの反応が少しだけ怖かった。下手くそと罵られたらどうしようか、心配していた。だが意外と、好意的なコメントばかり。


【あ。やられちゃったか】

【ドンマイ! ドンマイ!】

【いやでも、今のはしょうがないと思う】

【今の、避けたでしょ!】

【はい。下手】

【メッチャ上手いよ。初プレイとは思えない】


「ありがとう。頑張る」


 私達の挑戦は、続く。ゲームをクリアするまで、本気で配信を止めるつもりは一切無かった。だけど、あっという間に時間は過ぎていった。




「うわっ。もうこんな時間か。もっと集中していかないと」


 配信開始から二時間ほど経っていた。続けて配信している間に、どんどんプレイの腕が上がっていく。明らかに上手くなっているのが、自分でも分かる。


「よっしゃ! やったー! ボスを倒したよ、みんな」

【おおおおおお】

【いいねぇ!】

【おめでとう!】

【ボス討伐、おめでとう!】

【飲み込みの早さと、成長速度が化け物なんじゃ~】

【いや、凄すぎない?】

【ゲームセンス○】

【俺、こんな集中して長時間ゲームプレイできないよ】

【しかも、ずっと可愛い反応と声。疲れた様子も見せないし、体力おばけ】

【今日中にゲームクリアできそう】

【いや、流石にそれは無理じゃない?】


 どんどん先に進んでいく。途中、足止めされるような場面もあったが、今は順調に先へと進めている。




「ん? これがラスボス? もしかして、この敵を倒したらゲームクリア?」


 配信が12時間を超えそうになった頃、新たなボスが現れた。今までのボス戦とは違って、豪華な演出。初めて聞く戦闘BGM。雰囲気のある戦場。ラスボスなのか?


【そう!】

【そうです!】

【油断せずに行こう】

【うわっ!?】

【危なっ! いまのよく避けた】

【神回避】

【なぜ、今の攻撃を避けれた……?】

【この元魔王、一体何が見えていたんだ……?】

【いや、凄っ】

【スゲェ!】

【あっ!】

【そのまま、押し込め!】

【イケイケイケイケ!】

【負けるなー!】


 聞いてみると、本当にラスボスらしい。ボスとの最終決戦に辿り着いて、視聴者のボルテージも上がっていく。


「いけそう! って、やばッ。敵が近くにまで接近している場合は一旦落ち着いて、攻撃を回避してから、……一気に反撃する!」


【いけぇぇぇぇ!】

【負けるなぁぁぁ!】

【うぉぉぉぉ!】

【いったぁぁぁ!】

【おめでとぉぉぉぉ!】

【まじでクリアした!】

【おめでとう!】

【おめでとお!】

【いやぁ、凄い!】

【ヤバい。マジで凄い。伝説じゃん】

【耐久クリア、おめ】


「勝った? 妾が勝ったのか? 勝てたみたい? ヤッター!」


【おめでとう!】

【スゲェ。クリアできるとは、予想してなかった】

【正直、無理だと思った】

【いやぁ、スゲェよ。マジで】


「皆も配信を見てくれて、応援してくれてありがとう。礼を言う」


 カメラの向こう側で付き合ってくれていた彼女も長時間配信で疲れたようで、目を閉じたまま、今にも寝てしまいそうだった。さっさと、配信を終わらせるか。


「長時間の配信、疲れているだろうからゆっくり休んでくれ」


【それは、こっちのセリフです】

【お疲れなら、眠ってください。それが一番良いと思います】

【マオちゃん、最初から最後まで全然疲れた様子を見せないから凄いよ】

【ゲーム実況の才能があるなぁ】

【流石魔王】

【さすまお】

【いやぁ、良いものを見させてもらった。今日はぐっすり眠れるわ】

【お疲れ様ー】


「じゃあ、この配信は切るぞ。見てくれてありがとう。お疲れさま」


 視聴者と簡単に別れの挨拶を済ませてから、配信終了のボタンをポチッと押した。初の耐久企画配信は、成功に終わることが出来たようだ。

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