【第六話】遺跡の戦い

奥に進もうとした二人の前に、クモの巣が立ちはだかる。

「うわぁ、嫌かも……」

「誰も訪れたことがないんだろうな。君の剣でどうにかならないか?」

「クモの巣まみれは嫌だなぁ」

「後で磨けばいいだろ?」

「はいはい」

 左腰に穿いた剣を抜きざま、一閃する。その動作はよどみがない。スレインは剣士として育ったのだ。

「べとべとだ」

「砥石を届けてあげるよ。確かユルセンが掘り起こしたはずだから」

「ユルセンって水の属性だよな? 何で鉱脈に詳しいんだ?」

「僕に聞かれても困るね」

 言いながらも第二、第三のクモの巣を斬り捨てる。

 ふとスレインが立ち止まった。先に行こうとしていたエルーシャが振り返る。

「どうした?」

「しっ」

 エルーシャの言葉を遮ることなく聞いた後、スレインは静かにするように言った。それは警戒。剣士として、スレインの感覚は研ぎ澄まされている。危険に際しては、エルーシャをはるかに凌ぐ感覚を有していた。

「何かが近づいてくる」

 聞き取れるかどうかの小声。だがエルーシャはそれで危険を察し、杖を出した。いつでも魔法を唱えられるように身構える。

「どこだ?」

「近い」

 場所を聞いたはずだが、スレインの警戒は鋭さを増していくばかり。どこから襲って来るのか解らないのが、魔物の特徴だ。

「右!」

 叫んだ瞬間、スレインは飛び退いた。エルーシャが杖で攻撃を凌ぐ。

「クモの化け物?」

「いや、妖魔だ」

 わずかな会話だけで、相手の正体を探り合う。スレインが解らないものは、エルーシャの知識が必要だ。

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