【第五話】天族の歴史

この遺跡は最近見つかったもので、彼らが暮らす村の、すぐ近くにあった。それでも今まで見つからなかった天上遺跡だ。

「天華能力で見えたのか?」

「うん、かなり離れてる。でも間違いないよ、人間だ」

 最後の一言は、高揚感が言わせたのだろう。

「助けなきゃ」

「スレイン!」

 友の言いたいことは解る。この親友は、たった一人の人間として、意識してきたに違いない。だが彼らは、スレインを仲間と認めているし、他の仲間と変わらない態度で接して来た。

 だから孤絶感はない。そう思っていたのだが。

「相手は人間だぞ? 僕達が人間にどんな目にあわされたか、君も知ってるはずだ」

「解ってるけど……」

 それは幼い頃から聞かされてきたこと。

 人間達が天族と共存していたのは、天恍暦が始まってすぐの頃。すでに二千数百年前の出来事だ。最近まで、天族は人間達を見て来た。感謝の心を忘れなければ、天族は加護を与える。そうして妖魔と戦う術を教えて来たのだ。

 だがすべての人間がそうだとは言えないが、人間達は国を自分達で動かしていると思うようになった。器を為して加護を与える天族は、やがて社会から追われ、隠れ住むようになったのだ。

 だからこそ天族は、自分達の属性に応じた集落を築き、そこに隠れ住むようになった。それはここ数百年のことだ。

「頼むよ。俺が責任を持つ。俺……」

「スレイン……」

 気持ちは解る。同じ人間を放っておくことなど、スレインには出来ないのだ。助け合う心を教えられて来たスレインにとって、人間も天族も同じ仲間。

 だからこそ、どこまでも純粋にまっすぐ生きることしか出来ない。

 仕方がなかった。

「……解った。気は進まないけど、僕も手伝う。何か手掛かりがあるかもしれない。奥に進んでみよう」

「ありがとう、エル」

 お節介焼き。とは言葉にしない。解っているだろうから。それでも放っておくことが出来ないのだから、これは育てたほうに責任がある。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る