第23話
「時計台の時計が壊れてることに、アイツが気づいてなくて助かったよ」
山田さんが水筒の水を飲み干した後、タオルで汗を拭きながら言いました。
「あの時計さ、2~3日前から5時で止まったままだったんだよね。たぶん、倒れる前にあの時計を見たんだと思う。シュンタロウさんが来たの、4時だったんだけど」
「そういえば、4時半ごろ、ローバさんとチッタさんは、メリーさんが運転する車で公園に行ったなあ」
モー太郎さんがしゃがみました。
「あの男の人は、どうやって、ここに入ってきたんですか?」
「メリーさんが入れたんだよ」
なるほど。メリーさんが、従業員なんとかというところから、男の人をいれたんだ。
「メリーさん、みんなと一緒にシュンタロウさんを囲んで写真を撮りたかったんだって。よっちゃんに送るために。でも、アイツが来たから隠れたんだ。仕事中に遊んでるって言われると思ったから」
「牧場主さんは、本当のこと、知っているんですか?」
「知ってるよ。オレが昨日、全部話したから」
「へー、真実を知っていながら、俺たちを注意しないんだ!」
モー太郎さんが尻尾で地面を数回叩きました。
「さすがに、今回は、アイツに怒ってるみたいだぜ、社長。自分にそんな権限もないのに、メリーさんをチーフに推薦するなんて言ったし。嫉妬に狂ったメリーさんがよっちゃんに意地悪してアルバイトを辞めさせたなんて、メリーさんを悪者にしたからね。往生際が悪いっていうか、人を食ってるよ、アイツ!」
山田さんは草をむしり、投げるように手から草を離しました。草は風に乗って踊るように遠くへ飛んでいきました。
モー太郎さんがあくびをしてから言いました。
「あんなの食ってまで、悪役になりたかないね。水着のおネエちゃんなら、別だけど」
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