第7話
数日後、ローバさんの恋煩いの人が牧場にやってきました。でも、ローバさんは、その男の人のそばへ行こうとしません。
「ローバさん、あの男の人、来ましたよ」
私は、ローバさんにそう言いました。でも、ローバさんは
「うん、でも・・・」
と、男の人に背を向けて、さびしそうに答えました。続けて
「いま、よっちゃんとお話してるから、邪魔しちゃ悪いと思って」
男の人とよっちゃんさんのほうを振り返り、また、背を向けました。
よっちゃんさんが笑っています。男の人も笑いました。人間の恋人同士ってこんな感じなのかなあと思いました。ローバさんには申し訳ないけれど、本当にお似合いの二人です。この牧場に来る前、お世話になったサーカスの団長さんがシンデレラというお話を聞かせてくれました。その物語で、王子様とシンデレラが舞踏会で踊っているシーンを見ているようです。本当は、ローバさんも、よっちゃんさんと男の人がお似合いだってこと、わかっているのかもしれません。だから、見ないようにしているのだと思いました。男の人に、ローバさんが好きだってこと、知ってもらうにはどうしたらいいのでしょう・・・。
二人のそばに、山田さんがやってきました。私は思いつきました。そうだ、山田さんに伝えてもらおう!
「行きましょう。ローバさん!」
「どこへ?」
「山田さんたちのところです」
ローバさんは下を向いて
「シープちゃん、行ってきたら?アタシは恥ずかしいから・・・」
と言って行こうとしません。
「わかりました。私は、山田さんに頼んで、あの男の人にローバさんの気持ちを伝えてもらいます」
私はそう言って全速力で、山田さんの所へ走っていきました。
「シープちゃん!ダメ!ダメッー!」
そう叫んだローバさんは、私より遅れてスタートすると、あっという間に私を追い抜き、山田さんのところへ走っていきました。
「あ、ローバさん、来ましたよ。今日もニンジン、あげてみますか?」
と、男の人に言った山田さんは、ローバさんの後を全速力で追いかける私を見つけました。そして、
「おめぇにやるニンジンは、ねぇっ!」
と、叫び、バケツを振り回して私を追い払おうとしました。
「山田さんっ!シープちゃん、いじめちゃダメですよ!」
よっちゃんさんがどこからか飛んできて、私を抱きしめてくれました。ぎゅっと抱きしめられた、そのとき、懐かしいにおいがしました。
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