第6話

山田さんがお千代さんに話をしてくれたおかげで、ローバさんは、入院しないことになりました。その代わり、一週間後に、獣医さんの診察を受けることになりました。


「よかったよ、ローバさん。病院行かなくて」


花子さんが鼻でわしづかみにしたリンゴを2、3回、ポンポンと上にあげ、口に運びました。


「病院は怖いところですからね」


と、私が言うと


「そうそう。ひとりぼっちで部屋の中にいると、病気だから検査するって言ってたけど、ホントは殺されちゃうんじゃないかって、思っちゃいますからね」


と、チッタさんが答えました。


「病院って、怖いんですか?」


地面に伏せっていたきいちゃんが上目遣いに聞いてきました。


「怖いぜー。白い服着た胸の大きなおねえちゃんがニコニコしながら、注射をブスっと刺すんだよ、前足に。だんだん、意識がもうろうとしてくると、おじさんの声がしてくるんだ。『おとなしくなってきたから、はじめましょうか』って。あれっ、さっきのかわいいおねえちゃんが、この牧場のオーナーみたいな声に変わってきてる。なんでだ!って、思っているうちに、グーって眠っちゃうんだよ」

「・・・怖いですね」

「でしょ?おねえちゃんから、おじさんに変わっちゃうところがね」

「モー太郎さん・・・。怖いところが違っているような気がします」


遠慮がちに話すきいちゃんに、モー太郎さんは「盲腸には気をつけな」と言いました。

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