第2話帰り道

 翌日は休日ということもあり、僕は数少ない楽しみの一つであるいきつけのお店にいくことにした。

その店はいわゆるマニア向けの商品がところ狭しとならべられ、見るだけでも楽しいとおもわせるに十分な品揃えであった。

 アニメやマンガのフィギアにグッズ、コミック、レトロゲーム、DVDやレコードなんかも歩くのは困難ではないかと思われるほどつまれていた。

 いくつかの商品を物色していると、見覚えのある三つ編みが視界を横切った。

 その髪の毛の方向に視線をおくるとそこには見知った顔があらわれた。

 黒いプラスチックフレームの下の黒目がちな瞳は驚きの色をしている。

 黄色いパーカーを着た彼女は会社の後輩である三上梨香だった。

 白い手で口をふさぎ、僕の顔を見ている。

「しゅ、主任」

「三上さん」

 ほぼ同時に僕たち言った。

「どうして……」

「ああ、僕もねこういうの好きで、よく来るんだよ」

 そう言い、手に持っているコミックを彼女に見せた。

「あっ、これっておもしろいんですか?」

 耳の先端を赤くしながら、やや興奮ぎみに彼女はきいた。

 オタク特有の好きなものを目の前にした時の独特の早口であった。

「うん、面白いよ。とくにキメ台詞がいいんだよね」

 ぐいっと体をよせると三上は手に持っているコミックの表紙をまじまじと覗き込んだ。

 そして、グーと盛大にお腹をならした。

 一瞬にして頬が桜色に染まっていった。

「お腹すいてるの?」

 と僕はきいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る