第四章 幸せの鐘の音

第四章 幸せの鐘の音


私には高校時代から仲の良い同級生のSが居た。

Sは明るい性格で私とは気が合った。

音楽の趣味が一緒だったり、バイトを共にしたり、馬鹿な話題で夜更けまで一緒に騒いだ仲だった。


そんな気が合うSだったが、当時は彼女と呼べる存在の人が居なかった。

そこでY美ちゃんと相談をして飲み会をすることにした。

私の同級生とY美ちゃんの同級生を集めて飲み会を主催したのである。

私は既にY美ちゃんしか眼中になかったから合コンみたいな会ではあったが、主催者に近い立場でその会に参加した。

そして、その夜は思い思いに男女が会話を楽しんだ。


Sはと言うとMちゃんと言う女性と意気投合をして、それからは四人でグループ交際をすることになった。

グループ交際と言っても、私達は二人の馴れ初めを見守るような立場ではあったが。


ある日の休日、四人で集まって遊園地へ出掛ける計画をした。

そして早朝から集まって河川沿いの堤防を遊園地へと向かっていた。

もうすぐ遊園地が見えてくる国道まで辿り着いた時のこと、Sが運転をしていた車が交差点を左カーブした瞬間。

ハンドルを切り過ぎたSの車は左内側へと旋回する形で、ガードレールに激突してしまい、車はその場で走行不可能なほど大破した。


幸いにも同乗者に怪我は居なかったことだった。

しかし、その事故現場は運が悪いことに県境の国道で、レッカー車の要請をしたがその場で足止めとなってしまった。

時間にすると5時間以上も、その場で待機となっただろうか。

連休中の行楽シーズンでもあり、レッカー会社も事故処理の対応で朝から忙しかったようなのだ。


『こっち!こっち!ここで記念撮影するよー♪』

四人は遊園地へ行けなくなったことを悲観する訳でもなく、その待機時間を利用して、皆で事故現場をバックに笑って記念撮影をしたり、ランチで持参した手作りサンドイッチを食べたりして待機時間を潰した。


『みんなでポーズしようよ♪』

その国道沿いには多くの車が往来する場所でり、行き交う車中から私達の行動を不思議そうに眺める人も居たであろう。

でも、その事を気にすること無く四人は沢山の記念撮影をして楽しんだのだ。

今になって思えば、そんなエピソードの方が忘れられない思い出だったりするものであると。


その当時の写真には紺色のパーカーを着たペアルックの私とY美ちゃんが写っていた。

そして、SとMちゃんもちゃっかり赤い上着のペアールック姿の写真が思い出として刻まれていた。

そんな四人のグループ交際も楽しい時期であり、その後にSとMちゃんは結婚をすることになったんだ。


私とY美ちゃんより先に二人は幸せの鐘の音を鳴らして、その二人を私達は祝福した。

そして勿論、私とY美ちゃんも幸せの鐘の音を鳴らすことを疑わなかった。

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