十二歩目~初恋からの脱却と新たな苦しみ~
少しずつ僕は目が覚めて、状況を思い出し始めた。
同時に……。自らが再び片想いの道に入ってしまったことも思い出してしまった。
ようやく……ようやく梅葉への叶うことのない想いから解放されたのに……。
何故、人は人を好きになるのだろうか。よく「『好き』という気持ちに理由は無い」というがそれは本当なのだろうか。
僕は修学旅行が終わった翌日、音色に電話をかけた。
「もしもし、寺末だけど」
[どうしたの?]
「実は かくかくしかじか で……」
[それは仕方がなくない?]
「でもさ……。自分がされて辛かったことを自らするなんてひどくない?」
これを瞬太が聞いたら驚いて謝りそうだ。そんなそぶりはできるだけ見せないようにしてたからね。でも、別に君は悪くない。
[じゃあさ……。しない、なんて選択肢が選べるの?]
!
「……ぐぅ」
[ぐうの音は出てるよ、ギリギリ]
「けど、嫌なんだよ」
[嫌、って?]
「だってどうせ、僕が美弥のことを好きになったって、その想いは実らないじゃん」
[そうとは決まって──]
分かってない。
「100%叶うとは言いきれないでしょ。それなのに、なんで恋に落ちるのかなあ!どうせ叶えさせてくれないなら、そんな恋なら、そんな想いなら、誰かを好きになるようなプログラムなんてしなくていいよ!あんな辛くて……苦しい思いは……散々だよ……」
僕は、ただ、頭に浮かぶがままに吐露していた。
[……。私は、結果がすべてじゃないと思うな]
そうか……?
[例えば、君が梅葉ちゃんを好きになったから、君は瞬太とか私と仲良くなったわけじゃん?]
まあ、それは……。
[それに、これは君自身は釈然としないかもしれないけど、君のおかげで瞬太は幸せになったんだよ]
……。
[文也が、瞬太と梅葉ちゃんを幸せにしたんだよ。天使じゃん]
天使……ねえ。
[でさ、ここからが大事なんだけど]
「うん……」
[誰かを幸せにしたんだったら、いつか自分の元にも幸せってかえってくるんじゃないかな]
ああ。
「いい意味での因果応報みたいな」
[そうそう、そうだよ]
なるほどね。
[だから、結果がすべてじゃないよ。きっと途中で将来を変える何かがあるよ]
「そうかも……しれないね」
[絶対にそうだって!]
僕は時折、不思議に思う。音色がいつもこんなに自信満々なことを。本当に心の底から自身があるが故なのか、それとも……。過去に自信を失うようなことがあった反動なのか……。
それはきっと本人にしか分からないだろうから良いんだ。とにかく、僕は音色の言っていることに納得し、勇気づけられたんだ。
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