十一歩目~恋の始まりは修学旅行!?~
瞬太と梅葉の関係は、まるで既成事実かのように扱われはじめた4月。僕は未だに梅葉への想いを隠し持っていた。想いに傷がつかないようそっと慎重に扱ってきた。
そんなある日、修学旅行の班決めが行われた。梅葉と同じクラスだったならば……。2年半前の修学旅行が頭に浮かぶ。
違う違う。いつまで引きずっているんだ。いい加減諦めろよ。──そう脳が言い聞かせても心が頷かない。それなら仕方がない。無理やり……。僕に好きな人はいない。いない。過去にとらわれてはいけない。言い聞かせるだけだ。
「先生が決めてもいいけど、自分たちで決めたいだろ?」
先生がそう言って、周りの面々が頷く。そりゃそうだ。
「じゃあ、あとはクラス委員に任せるから。もし途中で一人になる人だったり、揉め事が起こったりしたら、その時は先生が決めます」
先生は、教室の後ろの方に行き、代わりにクラス委員が前に出る。
2人の男子と班を組み、あとは男子の班と女子の班を1つずつ合わせて、1つの行動班にする。
まあ、女子は誰でもいいかな。去年の秋に応援団で同じだった美弥とかが同じ班だったら良さげではあるけど。
「ねえねえ、寺末くん、同じ班にならない?」
そう声をかけてきたのは、美弥ではなかった。
「いいよ~」
まあ、声をかけてくれたことに感謝しよう。
そんなこんなで修学旅行の日はあっという間にやってきた。
2日目の夜。僕は自らの気持ちに気づいてしまった。
「お主は好きな人などはおらぬのか?」
かなり夜も更けてきた午前2時ごろ。僕らの部屋では恋バナが始まっていた。修学旅行の夜あるあるだ。
「うーん……」
「安心せい。俺も言ったやん」
ちなみに僕は梅葉のことを好きだと言った。まあ同級生の多くが知っていることだが。
「そうだよ。誰にも言うつもりもないしさ」
「まあ、そうだな。絶対誰にも言うなよー」
僕らはガクガク頷く。
「好きな人は、美弥……かな」
っ。
「あーなんとなく予想つくわ」
もう1人の男子がそう言った。教室でも2人が仲良さげに喋っている姿はよく見かける。
「え、告ったりは?」
「したよ」
っっっ!
「やるやん!」
「まあな。フラれたけど」
……。
「え、それっていつくらい?」
「中1の時」
「けど結構、普通に接してるよね」
僕は、梅葉にフラれ、何度か遊んだあとは全然話していない。話せる気もしない。
「そんな真剣に受け取られなかったのかもしれない」
「お疲れ、ハハハ」
……。それより、気になることがある。
「まあ関係が悪くなるよりかはマシだよな」
「間違いないね」
『好きな人は美弥』と聞いたときに感じた恐ろしいほどの衝撃。まさか、僕は、美弥を……。
いや、好きな人をあとから好きになられる、なんとも言い難い感覚は自分が一番分かっているはずだ。
……脳みそでは。
……脳が分かってても心が分かってはくれないんだ。それが気持ちってものなのかもしれない。
翌朝。僕は部屋に備え付けられたトイレの個室で目が覚めた。意味が分からない。
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