八歩目~後悔と焦り~

 また一つ。学年が上がった。しかも梅葉と同じクラスで瞬太は隣のクラスだ。

 一日修学旅行で同じ班になれないものかと思ったがそこまで良いことばかりは起きないらしい。まあ、同じクラスになれたということは少しでも距離を縮められるということだろう。瞬太は別のクラスだし、とりあえずのところ大丈夫そうだな。

 そんなことを思っていると、席替えで隣の席になった。とは言え、隣の席でも一、二メートルは間隔が空いているのだが。これはチャンスではないか。そう思えたのも束の間。

(何を話せばいいんだ……)

 そう、僕はそこまでトークスキルがあるわけだはない。ましてや好きな人相手など余計にだ。

 ただただ、気まずいだけ。やはり、あの時に告白していなければ。募る後悔。そうすれば、瞬太と梅葉が両想いになることすら無かったのではなかろうか。

 そうして、授業中のグループ学習でちょこっと話しただけで次の席替えがやってきた。


 一学期末テストが終わり、結果も返ってきたがためにいろいろな意味で終わったある日の放課後。炎天下にもかかわらず僕と瞬太はいつもと同じように喋ろうとしていた。

「はあ……。終わったわ」

 いつもと違ったのは瞬太のテンションがものすごく低かったことだけ。

「僕も無理ゲーだったよ、あれは」

「いや、まあテストもなんだけどさ……」

 テストじゃないならなんだ……。僕は必死に考える。

「いや分からんな」

「まさかあいつに負けるとは思わなかった……」

 やっぱテストか?

「はあ……。なんとかスルーできないかな……」

 す、スルー?

「いやちょっと最初からお話願いたい」

 すると顔を伏せていた瞬太は顔を上げて、話し始めた。

 

 

 元々、期末の前からテストの点数で勝負しよう、ってのは言われてたんだよ。で、そいつが「私が勝ったら梅葉ちゃんに告白して」って言ってきて。さすがに勝てるだろと思って受けたら、負けた。

 

 

「そんなわけで、一学期中には梅葉に告ることになった」

 ……。

「ん?どうした?」

 瞬太が僕の顔を覗き込んでくる。てっきり“まあ、冗談だけどな。こんな状況になりたくないのなら早めに告白することだな”という言葉が来ると思っていたのに……。

「本当なの?」

「ああ、嘘は一つもついていないぜ。あとさ……」

 

 

「『もし瞬太に告られたら付き合う?』って聞いたの。そしたらね最初『う〜ん……』って言ってたけど『付き合うかな』って言ってたよ。だからさっさと告りなよ」

 

 

「って言われたんだよ」

 ……え。もしかしてこれは結構ヤバめな感じのやつ?

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