二歩目~これが……本当の恋?~
12年と4、5ヶ月の短い人生。これまでにも「この人のことを好き」という思いを持ったことは幾度もあった。2、3年前からはずっと1人の人に思いを寄せていたのだ。
きっと、これも同じようなことだ。叶うことも無ければ、そもそも告白なんて大層なことできるわけが無い。
……艶やかな黒髪。
なぜならただ“好き”というだけだから。“Love”ではなく“Like”や“Respect”なのだから。
……羨ましさを隠さずにはいられない頭の良さ。
……それでいて一切おごり高ぶること無く、努力を重ねる真面目さ。
この状態を勘違いすると“恋する自分に恋している”という状態になってしまうのだろう。なんと自分勝手な勘違いなのか。
……たまに天然ボケをかますギャップ。
……だいたいの運動ができてしまう運動神経。
……ここまで完璧な人が他にいるだろうか。いやいるはずが無い。
ただ、僕は分かっている。これが尊敬の念、羨望の念であることを。テレビの中で見る恋は、小説の中で見る恋は、こんなものではない。
…………なのか。
……僕は梅葉のことが……なのか。
……分からない。
……僕の知っているちゃんとした…はこんなものではない。
……けど、これまでの……という気持ちとはまったく違うようにも感じる。
……これは一体、なんなのか……。
……
……
……い
……~い
……~い!
「お~い寺末!」
「ふぁっ!」
何を考えていたんだ僕は。
「まったく何をボーッとしてんだ」
ん?
「ああ、瞬太と……音色?」
「そうだよ」
「記憶喪失でもしたか?」
「記憶喪失する理由が無いやん」
僕は笑いながら首を振る。
「まあいいや、単刀直入に聞く」
はあ……突然なんだ?
戸惑いながらも身構えると音色から思いもしないことを聞かれた。
「梅葉ちゃんのこと好きなの?」
!!
いや、ここで動揺を見せてはいけない。この2人は何かと勘が鋭いのだ。このよく分からない気持ちを誰かに伝えたって恥ずかしいだけだ。……いやいやいやよく分からない気持ちじゃないだろ、自分。
「いや、全然全然。そんなことは無いよ」
慌てて手を振り首を振り否定する。
「ふ~ん……そうか。ならいいんだが……」
妙に意味深な瞬太と音色の様子に疑問を覚えて口を開いた時には2人はもう自分たちの机に向かっていた。
「……残念」
「そうだな……。まあそういうもんだろ」
「私の読みでは……と思ったけど」
しかし、去り際の瞬太と音色の会話が聞こえてより僕は疑問を覚えた。
──
「そういや、梅葉ちゃん好きな人いるらしいよ?」
「へぇ~。あいつは一途そうだよな、なんとなく」
「誰だか分かる?」
「寺末とか。二人とも真面目だし案外、お似合いなんじゃね?」
「……やっぱ教えな~い」
──
「梅葉ちゃんのこと好きなの?」
「……残念」
──
分からない。梅葉が僕のことを好き、ということはさすがに無いだろう。つり合わなさすぎる。でもじゃあ一体、2人はなんでこんなことを言ったり聞いたりしたんだろうか……。
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