第9話 『びっくり箱』


 これはあんまりだ。私は製造元に電話をかけた。


「もしもし。オモチャ売り場でおたくの《びっくり箱DM》を買ったんだけど」

「ああ《デラックスマジック》ですね。まいど」

「まいどじゃないよ。何の仕掛けもないどころか中身空っぽじゃないか。いくら安くてもこれはないだろう」

「それが仕様でして」

「仕様?」

「お客さん、品名の上を見てください。小さく書いてますから」


 私はパッケージを見つめた。


「……『ある意味』?」

「そうそれは《ある意味びっくり箱DM》。開けても何も出ません」

「ただの空箱だそれは!」

「まあまあ。ところでお客さん、新製品《最新式びっくり箱》の話、興味あります?」

「最新式?」


 十分後、私はすすめられるまま最新式びっくり箱を買っていた。

 最初から勧誘が狙いだったのだろうか。後日、私は気付いてびっくりした。例の空箱の品名にある『DM』の文字がデラックスマジックとダイレクトメールのダブルミーニングであることに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る