第4話 『北風とチョコレート』

 ようこそ。秘密結社『哀しき男たちの止まり木』へ。

 いや、言わずとも結構。傷口に塩を塗ることはない。

 君に深い同情を。そして心からのお祝いを。

 君がこころざす政治の世界にもここのOBは多い。入会後はきっと彼らが便宜べんぎはかってくれるよ。

 ところで、上等なカカオの生育に欠かせない物は何か分かるかね?

 ……そう、北風だ。

 雪の下に放置されることで甘みを増す野菜があるように、カカオは北風にさらされることで芳醇ほうじゅんな香りを蓄える。

 我々が憎むに憎みきれないチョコレートには、実は厳しい北風を耐え忍んだ過去があるわけだ。

 人も同じさ。分かるね。辛い境遇を耐え忍んだ者は後に必ず大きく花開く。悔しさをバネにして天高く飛び立つ。夢を叶える。その暁には、ああ、そうさ! バレンタインデーに1つもチョコを貰えなかった惨めさなんか、すっかり、すっっかり、すっっっかり、どうでもよくなっているさ!

改めて、ようこそ。秘密結社『哀しき男たちの止まり木』へ!

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