カンプピストーレと繰術 その3


数人の男が、次々と颯輝に殴り掛かる。

しかし、それを颯輝は、攻撃が当たるか当たらないかのギリギリでかわし続けた。多少は体術の心得があるみたいだ。


襲い掛かる男達の中には、棒切れを持っている物も居た。颯輝は一瞬、ギョッとした表情になるが、男が長得物を振り下ろすと同時に、下から相手の腕をからめとる様に掴み、投げ飛ばす。それと同時に、男の持っていた棒切れを、颯輝が奪い取った。


「うおおっ……!?実戦で、無刀取りなんて、初めてやったぞ!アレだな。覚悟を決めれば、意外と出来るもんだな!」


複数の男の攻撃をかわしながら、ゴチャゴチャと何やら喋っている。そんなことをしているものだから、あっという間に男達に囲まれてしまった。しかし、颯輝は余裕だ。

棒切れを構え、威勢良く男達を挑発する。


「うっし!お前らかかって来いやー!得物を持つと、俺ってばちょっと強くなっちゃうよー?!」


なにをと次々に、得物を持った男達が襲い掛かる。颯輝は、敵が得物を振り下ろすよりも早く、相手の手に棒切れを打ち付け、武器を叩き落とす。次々と、颯輝に手や指を砕かれ悶絶する男達。

1対多人数においても、颯輝は引けを取らなかった。


うーん。なかなかやるわね。棒術かしら?それとも剣術?テクニックだけなら、颯輝がこの中で1番上手いわ。

柄にもなく、心の中で少し褒めかけた、しかし、その時だ。


「……しまった!!」


颯輝が振り向き、叫ぶ。


大男が、こちら目掛けて猛スピードで走り寄ってきたのだ。見た目によらず、かなりの速度がある。


実は、颯輝に群がる男達は陽動で、本命は大男。初めから奴等の狙いは颯輝では無かった。私達を、人質にするつもりなのだろう。意表を突き、攻めやすいところから落とす。全く、狡猾な戦略である。


「へえ、優位性をとる戦略としては、なかなか悪くはないわねえ」


呑気に感心してみせる。


「ちょっと、イブ。逃げようよ!」


「まあまあ、待って頂戴」


ムーが、避難を提案してきた。まあ、そうよね。あんな大男が走って向かってきたら、普通は怖がるもんだわ。


あの大男の腕。太さからすると、一掴みで私の首など容易く折ってしまうだろう。ただ大きいだけではなく、その身体には無駄がない。戦闘をするために鍛え上げられている様に見える。


しかし、私はこの状況下においても、全く恐れはなかった。

大男が、私を今まさに掴もうとしたその瞬間――


「……あんた、向かってくる相手を間違えたわねっ!」


身体中が淡く光り、次の瞬間。大男の背後から回し蹴りをお見舞いする。

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