イブ、買い物中に日本人を拾う その3
倒れている人をよく見ると、奇妙な点が多いからだ。
まず、今は夏だというのに、不釣り合いな厚着。今までに見たことの無いデザインの、ツヤツヤとした服。一体これ、なんの素材で出来ているか分からないわね。他にも、ところどころ破れているし、その辺で転んだにしては不自然だわ。どちらかというと転落してきたような?
でも、そんな事より、左手よ……
――アレがないわ!
ちょっぴり、興味が湧いて来た。
どうやら、倒れているのは男性の様ね。歳は私と同じくらいだろうか。
ついつい、好奇心に負けてしまい。私は、ムーと一緒に、倒れている男の近くまで来てしまった。
「……う、うう……」
うつ伏せの男が唸っている。
行き倒れと言うには、空腹で倒れた感じはない。
何かの衝撃を受けて倒れてしまっている。と言う方が、しっくりくるかな。
さーて、ちょっくら顔を拝んでやりますか。
私は、男を両手でめくるようにひっくり返し、うつ伏せから仰向けにしてみた。
「うがっ!」
うん?少し頭を打ったかな?
「ちょっと!イブ、乱暴だよっ」
ふわふわと浮いていたムーが、慌てて地面まで降りて来た。
「大丈夫、大丈夫。これしきで死なないわよ。それよりも、ほら、目が覚めたでしょ?」
うーん。この辺では見ない顔立ちね。
ちなみに、まあまあかな?
黒髪に短髪。何処の国から来たんだろう?あ、目が開いた。
「あっ!?」
男は目を見開いて、慌てたように飛び起きた。
続いて、急いで周囲を見渡し始める。
……ふーん?どうやら状況が把握できず、混乱をしているようね。
おっと?今、目があったわね。
すると、目の前の男は、必死で私に語りかけてきたのだった。
「 かすおとけろっ ささひどさだっ!」
え?!これ、何語?!!
「みしき……さなばがてえじにうはき!?」
どうやら、男もこちらの反応を見て、言葉が通じない事を悟ったようだ。
「困ったわね。言葉が通じないんじゃ、何も分からないじゃない……」
私は、ムーをちらりと見る。
ムーは、混乱している男に同調して、一緒になって慌ててしまっている。
「大丈夫よムー、落ち着いて。……ちょっと。この男の人の言語の割り出しできる?」
「え?……あ、うん。やってみる」
そうか!と何かに気付いた様子で、一度大きく見開くと、直ぐに真剣な顔つきに切り替え、左手を前方に伸ばした。
左手の甲には、動物や植物、意味のあるマークがあしらわれた複雑な模様のシンボルマークが刻印されている。
ムーのシンボルは木のマークだ。
そして、特定のワードを詠唱した。
――魔法だ。
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