カンプピストーレと繰術
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<あらすじ>
お買い物をしていたイブと、ムーは、道ばたで倒れていた日本人の颯輝を拾う。
颯輝はてっきり、自分は異世界へ転移してきたものとばかり思い込んでいたが、
実はここは地球で、颯輝はタイムトラベルをしてきたのだった。
そんな颯輝に、「日本人はすでに絶滅した人種だ」と告げると、「そんなはずはない」と逆上してしまう。
――しかし、その時、何者かがぶつかって来たのだった。
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「痛っ!」
ぶつかられたは、ムーだった。
当たってきた相手は、中肉中背で冴えないツラをした男だ。
歳は20代半そこらだろう。男は、こちらを見回し、こちらが子どもだと分かるなり、「ああん?」と威嚇混じりに、顔を突き出し近寄って来る。
「っだあ?!イッテェな!どこに目をつけてやがるっ!」
あ〜、典型的なゴロツキだわ。また面倒なのに絡まれたわね。
「あんたこそ。勝手にぶつかってきておいて、謝りもしないわけ?」
私は、たしなめる様に声をかけた。
ムーにぶつかってきたのだ。本当なら、今直ぐにでもとっちめてやりたいぐらいだ。穏便にいきたいので、これでも言葉は選んだ方だ。
「んだとっ?!ムカつくガキだなぁ?!」
しかし、ガラの悪い男は、穏便どころか罵声を浴びせてきた。
うっわーっ!何その態度?そのセリフ、そのまま返してやりたいわ!段々、私まで腹立ってきたわよ!
「イブ、ボクなら大丈夫だよ。……ごめんなさい、おじさん。気が動転してて気付かなかったんだ」
いいのよ、そんなの。相手のことを庇うなんて、ムーは優し過ぎだわ!
「ムーは悪く無いわよ。悪いのはこのオッサンよ!」
「オ、オッサンだとっ?!俺はな!まだ21だぞ!くそっ!ますますムカついてきた!おいっ!どう落とし前つけるつもりだ!!」
ガラの悪い男は、難癖をつけてさらに声を張り上げた。
その声は、通りに響き渡るくらいだ。
周りを歩いていた人達は、さっきまでは足を止めてこちらのやり取りを見ていたが、いざ、事が起きそうになるや否や、目を合わさない様に遠くを歩き始める。恐らく、いざこざ巻き込まれなくないのだろう。
……はあ、本当に皆、他人事よね。この街のこういう所は、嫌いだわ。
そんな、苛立ちを募らせている時だった。
「……おい、オッサン!」
男に、声を掛ける者がいた。颯輝だ。
「だからオッサンじゃねぇっつってんだろ!このボケが!!」
「俺、さっき見てたけどな。オッサンの方がぶつかって来ただろ。ムーは、見ての通り浮いてるから目立つんだ。普通は気付くよな?」
颯輝の言葉に、男は舌打ちした。どうやら図星だったようだ。
確かに言われてみれば、ムーに接触しそうになった人は、今まで一度も見たことが無いわ。
ふーん?見た目の割に、意外と観察力あるわね。
「……チッ。テメェ、口の聞き方に気ぃつけろや。そのムカつくツラァ、ギタギタにするぞ?」
「やめておけよ。あんたもタダじゃ済まないぜ?」
「あ゛あ゛っ?!」
男は、益々興奮し、威嚇してきた。額には血管がビキビキと浮き出ている
颯輝に至っては、そんな男の挑発に乗らず、涼しい顔をしている。なかなか堂々としたものだ。
「……おい、お前。ここは人が多いから、こっちでやるぞ」
「いいぜ。買ってやらあ。あとで泣くなよ、オッサン」
ついに男が喧嘩を売って来た。
顎で路地の奥を指図し歩き出すが、颯輝もやれやれといった様子で、男の後をついて行き始める。
「え?ちょっと!あんた待ちなさいよ!あんな奴なんてね、そこら中にいるんだから!全然付き合う必要なんてないわよ!」
「悪い。でも、お前達まで付いて来なくていいぞ。ここは女と子どもの出るところじゃない」
颯輝は、制止を聞き留める事なく、進んで行く。
……全く!あんただってガキでしょうがっ!
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