雨の日

 その日、私が住む町では朝から雨が降っていた。

 雨が降る日は、気が滅入る。少なくとも、この日の私はそうだった。

 会社に行く足取りも、心なしかいつもより重い。

 自動ドアをくぐって、建物の中に入り、傘をたたむ。水色の傘は水滴を垂らしながら、私のたどった道を記した。


 昼の休憩は、コンビニのパンだった。今日は一日中雨であるとの予報が出ていたので、来る間に買っていたのだ。

 パンを食べ終えると、無性に屋上に上がりたくなった。


 屋上に来た私は、雨に濡れるのもかまわず、広大な水たまりとなっているそこに足を踏み出した。

 何かに促されるように、私は歩を進めた。

 そして……。

 縁に備えられていた手すりをつかみ、乗り越える。

 あと一歩、そのところで、肩をつかまれた。

 振り返ると、同僚だった。必死の形相を、雨が伝っている。

「……何してるんだ」

 私は驚いてそう言うと、同僚は口をあんぐりと開けて。

「何をしているのはこっちの言うことだ」と言った。

 そこで、漸く私も自分の置かれた状況に気がついた。前方に目をやると、何も無い空間。眼下には、遠くはなれた地面。

 私は、投身自殺を図ろうとしていたのだ。

「…………」

 思わず言葉を失う私の背中を、誰かがドンと押した。

 空中へ躍り出る私が、くるりと回転すると、身を乗り出し、決死の形相で私に手を伸ばしている同僚と、その背後の女の顔が見えた。


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後書き


先ずは、十話まで読んでくださり、ありがとうございます。

元々百日百話投稿を目指して書いているので、一先ず一割書けたようで、何よりです。

さて、一話から十話までの諸々を振り返ってみようと思います。ネタバレ注意!





お月様と親子……作者が崇拝している夢野久作臭がすごくしますね。お月様がビー玉になるアイデアはどこから来たのだろうか……金平糖が星になる小説を昔読んだことがあるので、そこからかも知れませんね


雷の子供……すごく児童書っぽい内容。いや、本当にこういう児童書ありそうで怖い。調べる勇気無い……最後のモールス信号は蛇足だったんじゃないかとこちらも怖い……


風……ミステリなのかホラーなのか、曖昧な感じを書いてみた。この風の強いビル街には、モデルがありまして、一度本当に一歩も進めなかった時もあります。


流星群の夜……ファンタジーからのヤンデレホラー。破片と書いて「かけ」と読むのは、これまた崇拝している夏目漱石の夢十夜から。転生と復活という違いはありますが、そこも夢十夜に影響受けてますね。


火と如来……ファンタジーホラー。最後の所はお気に入り。最初は如来に救われる救済エンドだったのだけど、変えて良かったと心から思ってる。ホラーだからね。


黒猫……若干ホラー?最初は猫が予言をするという話だった。予言の内容が上手くいかなくて、ただ猫が喋るだけになった。でも白昼夢っぽい感じはより出せたかなと思う。結果的にはあれで良かったんだろう。


市街戦……これだけファンタジー的要素がない。(戦争がファンタジーなのかな?)というのも、これだけ僕が見た夢を元に書いているから。殆どそのまま。これを見た後に自分の浅ましさに本気で悩んだ。でも、面白い悪夢だなって思う。


水中都市……オチがホラー。水中の美しさをもっと表せられなかったのか悩んでます。表現力が欲しいです。もっと本を読めって話ですけど。


夜の墓場にて……これもホラー。ホラー好きだな。こっちはラブクラフト御大の死体安置所にてのオマージュ。オチとかそのまんまだな!でも、『私』の首折れたら語ることが出来ないし……因果応報系は昔からあるし……作者は江戸の時代辺りをイメージしてましたが、はてさて……。


雨の日……ホラー。この作者は一切説明しないことをリアリティと勘違いしていることがよく分かる作品。でも、前降りとか一切ない方が自分のみにも同じ事が起きそうで、怖いと思う。『私』も凡庸な、特に悪いところの無い一般人だったのだろう。

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