流星群の夜
真夜中の草原に、女が一人ポツンと立っている。その傍らには男が横たわっていた。男は、死人であった。
その夜は流星群が降り注ぐ夜であった。女が立っている草原にも流星群は降り注いでいた。
女が住む町には一つの伝説があった。
流星群の降る夜、振ってくる星の破片(かけ)を死人に与えると、蘇るというものである。
女は、流星の一つに手を伸ばし、それを空中で受け止めた。星の破片は丸かった。それでいて、僅かに白く光っていた。真珠のように……。
女は男の胸に、破片を置き、それを押し込んだ。
すると、男の胸が、星の破片の色に光ったかと思うと、俄(にわか)に上下に動き出した。
女はそれを確認すると、安心したようにため息を吐いた。
男は、死の静寂の内から目覚め、自分の身に起こったことを理解できないように、目をパチクリし、辺りをキョロキョロ見渡した。
女は、男をヒシと抱きしめた。
男は、されるがままになっていた。
男を殺したのは女であった。
女は男を愛していた。しかし、男には別の愛する人が有った。そこで、女は、自らの手を汚すと共に、星の破片を使い、男を自分のものとしたのである。
男はそのことを知っていた。
自分が死んだ時のことを覚えていた。
しかし、それが一体何の救いになるであろうか。
自分は既に死んでいるのである。
既に葬式も済まされており、元の生活に戻ることなど、望むべくもない。
男には、選択肢など無かった。
やがて、女は立ち上がり、男に手をさしのべた。
男は、表情を変えないままに、その手を取った。
女はにっこりと笑って、男を立ち上がらせた。
二人は、並んで、草原を歩いて行った。
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