ゼロから始めるカップル(偽)生活
悠と千夏が偽のカップルとなった翌日、悠はこれ以上に無い最高の気分で登校していた。
(千夏ちゃんが彼女!偽だけど!千夏ちゃんが彼女!偽だけど!)
とにかく嬉しかった。偽りの関係でも初めて出来た彼女。しかもそれが理想の女子高生だなんて。
(前世の俺には100%、いや、120%無理だよな。)
あらためてこんなチャンスを与えてくれた神に感謝する。
前世で何の徳も積んで来なかったなぜ神は自分にこんな事をしてくれたのか悠は謎に思っていたが、考えるだけ無駄だと思い、考えない事にし、今この時間を大切に楽しんで行こうと決めた。
しばらくして、教室に着くと、悠の隣の席には既にあの人が座っていた。
「おはよ。悠君。」
(ゆ、ゆ、悠君!!?)
突然の不意打ちに腰が抜けそうになる。
いくら恋人のふりとは言え下の名前で呼ぶとは悠には想定外だった。
「お、おはよう。ち、千夏。」
悠も千夏の事を下の名前、しかも呼び捨てで呼び、その場にいたクラスメイトがざわつき始める。
「お前ら、付き合い始めたのか?」
秀馬が興味ありげな顔で聞いてきた。
「うん。昨日から付き合い始めたの。ね?悠君。」
「あ、あぁ。そうだな。」
「おぉー!最強のカップル誕生か!!」
秀馬が盛大に拍手を贈り、2人のカップルの誕生を祝福する。
(ちょ、やめて!恥ずかしいから!これ、偽物の関係だから!)
そんな事を言えばずもなく、さらにクラスのみんなも祝福し始めさらに恥ずかしくなる。
「や、やめてくれよ……」
悠が照れ臭そうに言うが止まらない。
(割と真面目にやめてほしくなって来た。)
偽物と言う罪悪感と単純にこういう事に慣れてなく、辛くなっていく。
「おっと、2人の時間を邪魔するわけにはいかないな。お幸せにな。」
そう言い、秀馬は悠達から離れて行く。
(やっと終わったのか?)
まだ少し、みんなの祝福モードの余韻が残っているが、2人に話しかけようとする者はいなくなった。
「おい、なんであんな堂々と言うんだよ。」
悠はみんなに気づかれないように小声で千夏に話しかける。
「だってあぁしないとみんなに付き合ってるって知ってもらえないじゃない?」
「そ、それはそうだけどさ……」
納得するが、こんなの初体験で恥ずかしいからやめてくれ。なんて言えない悠はため息をつく。
「まぁ、納得はしたけど悠君はちょっと早くないか?」
「でも、言っちゃったし、もういいじゃない。」
「うっ……。わかったよ。好きにしてくれ。」
「そうするね。」
折れた悠は千夏に任せる事にする。コミュ障より、理想の女子高生に任せた方がいいと、思ったのだろう。
(みんなにチヤホヤされるのは嬉しいけど、やっぱり罪悪感があるよな。)
偽物の関係がバレた時の事を考えると恐ろしくなり、悠の肩が震える。
(隠し通す。隠し通して恋人を演じるんだ。)
そして、悠は決意をしたのだった。
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