自己紹介はクールに

 始業式。


 校長先生の長い話を聞いた後、悠はだらだらと教室へ戻る。


(ま、まずはモテる以前の問題。友達作りをしなくては!)


 この後クラスメイト全員で自己紹介があり、それに悠は賭けていた。


「––––それじゃあ自己紹介から行きましょうか。じゃあ天野さんから。」


 先生はそう言い、天野と言われた女の子は立ち上がる。


天野花華あまのはなかです。皆さんよろしくお願いします。」


 花華は短く自己紹介を済ませて座り、もう悠の番になった。


「はい。新垣悠です。えー、趣味は本を読む事です。みんな、一年間よろしく。」


 クールにそう言うと静かに座る。


(本とは言ってもラノベだがな!!)


 心の中でドヤる悠は前の席にいる花華を見つめる。


(大きすぎず小さすぎずの胸。顔も可愛い。うん。いいね!)


 悠のいやらしい姿勢を感じたのか花華の肩が少し震えた。



「茅根千夏です。恥ずかしいんですけが食べるのが好きです。これから一年間よろしくお願いします。」


 笑顔でそう答えた千夏に多くの男子が心を奪われた。

 もちろん、その中には。



(て、天使だ。尊い……)


 悠もいた。


(可愛い!可愛いよー!千夏ちゃんー!!)


 悠が心の中で叫んでいる内も自己紹介が続き、とある男子の番になる。


斉藤秀馬さいとうしゅうまです。みんな、よろしく。」


 聞く人がとろけそうなボイスと甘いマスクに悠は嫉妬をした。


(なんだよ。イケメンだからってみんなデレデレしやがって…………おっと、俺もイケメンだったわ。)


 今の自分がイケメンだと思い出した悠はすぐに開き直る。


 その後も自己紹介は続く。


松崎吉奈まつざきよしなって言います。これからみんなと仲良くなれるよう頑張ります。」


(うん。ロリっ子!ぎり許容範囲!!)


 悠にとっては吉奈は恋愛対象としては許容範囲らしい。


「えっと、丸井隼人まるいはやとと言います。趣味は読書です。その……よろしくお願いします。」


(丸井君………同士の匂いがする。)


 眼鏡をかけていて中肉中背。


(前世の俺よりはだいぶマシだけどな。)


 前世の悠は髪はボサボサで背は平均的だが、人よりお腹が出ていた。劣等感は抱いていたが、どうせ変われるわけないと悠……いや田中負拓は諦めていた。


(俺もあのぐらいだったらなんとか頑張ったんだけどなぁ。 ………いや、諦めずに頑張れよ。俺。)


 自分に嫌気がさす。

 悠はため息をつくといつの間にかみんなの自己紹介が終わっていた。


 その後、先生の話も終わり今日はこれで解散となった。



 悠は立ち上がり鞄を持って帰ろうとすると、斉藤秀馬に声をかけられた。


「新垣だったよな?悠って呼んでいいか?」


(なんだこいつ。馴れ馴れしいな。)


「おう。いいよ。こっちも秀馬って呼んでいい?」

 悠はとりあえず秀馬のノリに合わせてみた。


「あぁ。これからよろしく。悠。」

 そう言って秀馬は帰って行った。


(俺も、こうやってみんなに絡んでいけばいいのかな?)


 陽キャのノリに慣れない悠は頭の中でメモを取り、いつか実践しようと心に決めた。

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