第5話 威加瀬vsマワルンジャーイエロー・前編

 射茅視いかやしが新しい子をスカウトする旅に向かった。どうやらこれは恒例行事で、理解のあるリマキを増やそうと頑張っているようだ。厳選に厳選をとか言っていた気がする。


 それから3日経ち、俺は美結陽びゆように武器について教えてもらった。

 他にも、戦いの立ち位置や距離に適した武器など、戦闘のノウハウを叩き込まれた。最後に、相手によって戦い方を変えるから詳しく言えないと言われたとき、少しピキッと来た事は秘密にしておこう。


 ◇◇◇◇


『……御生録ごいろくリマキ小学校に奴らはいる。デザートレンジャーを閉じ込めてるかもしれない。出来るだけ戦闘は避け、発見したら直ちに連絡をくれ』

「「ラジャー!!!」」

『それじゃあ、健闘を祈る』


 そう言うと通信機から音が消える。

 戦闘を避けるのか戦うのかはっきりして欲しいものだ。

 俺はショルダーバッグに通信機を終い、地図を開く。電波くらいは通ってると思っていたんだが、これでは山奥と同じじゃないか。誠に残念である。


 地図を頼りに御生録リマキ小学校へと歩く。まだ10日しか経っていないため、撃ち込まれたグリーンの足はまだ完全には治っていない。ブルーがおぶっているが、最悪置いて行く事になるのだろう。

 案ずるな。あくまでもの場合だ。俺の頭さえあればこんな未来には導かない。

 さて、勝負だリマキ共。俺の腹と財布が膨れる準備はもう出来てるぜ。


 ◇◇◇◇


 美結陽から生存のために必要なものについて学んでいた時に何処かから爆発音がした。窓がガタガタと音を出し始め、今にも割れてしまいそうだ。

 その煙の後ろにゾロっと5人が並んでいたのが遠くからだが、よく見えた。


「クソッ、折角麌蘭堂ぐらんどさんに地雷仕込んでもらったのに」


 花褸紗かるしゃがガクリと肩を落とす。煙を気にせずにずかずか歩く奴らを見ていたら、1つ気が付いたことがあった。

 

 そう、奴ら『回転戦隊マワルンジャー』が再戦を求めになのか、我がテリトリーに足を踏み入れたのだ。


 俺が外に出るため、律儀に玄関に向かおうとしたら、花褸紗が窓を割り、外に飛び降りていった。それに続き、青劉嫁ありゅか美結陽びゆようも窓から外に飛び出た。

 奏乃夜かなのよはテクテクと玄関に向かっていた。飛び降りようと思ったのだが、なんせ高い。高所から落ちたら死ぬと美結陽が教えてくれたんだ。俺もテクテク玄関に向かうとしよう。


 ◇◇◇◇


 外に出ると、花褸紗が戦っている姿がまず目に入った。メルチスティックを自由自在に操り、まるで同年代とは思えない程の動きに心底びっくりした。


「あら、ボク。久しぶりね」


 聞いたことがある声。声の方に向くと、見覚えのあるイエローがコマを持ち、こちらへやって来る。


 現在地はピロティ。爆弾を投げたら建物が崩壊し、ぺちゃんこになる。かといって校庭に出てしまうと他の方の迷惑になる。ここで何も壊さず戦うしかないのか。


 俺は包丁を取り出し、右手に持つ。

 イエローは目にも留まらぬ速さでコマに紐を巻く。


「リベンジ・マッチよ! ボク!」


 イエローはコマを宙に放り、紐をピンと張る。この世界には重力という物があるのだが、このコマはそれを知らないようだ。真っ直ぐ俺の腹に向かってやって来て、刃を見せつける。

 前回は転んで避けたが、美結陽に 戦闘で同じ相手に同じ手を使っても意味がないと言われた。今回は鉄の壁を出す。それにイエローはいち早く反応し、紐を後ろに引っ張ってコマを蜻蛉返りさせる。


「へぇ、やるじゃんボク」


 コマを手の平で回しながら話しかけるイエロー。逆の手でポケットを探っているのを俺は見逃していない。


「なら、これはどうかな?」


 イエローは、ふんと腹から声を出し、コマを2個宙に放った。

 紐は1本しか持っていないのに、2個のコマが全く違う動きをしている。1個数が増えただけでこんなに違うのか。どっちのコマに注意すればいいのか分からない。


 真上からギュルギュルという音が聞こえて、音の鳴る方に目を向けると、ちょうど上からコマが落ちてくる光景が映った。

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