第3話 vs回転戦隊マワルンジャーイエロー

 ヒーローとの戦闘は、爆発の合図で始まった。相手の人数は赤・青・黄・緑・黒の5人。それに対しこちらは2人。不利だ。


 緑の服の人は、青い服の人に抱えられ、岩の後ろに連れて行かれた。それをチャンスと思い、インファイトを仕掛けに攻めようとすると、射茅視いかやしが待てと声を張る。返り討ちに合うと言っていたが、ちょっと意味が分からない。負けるという事なのか? 向こうに背を向けずに戻ると、奴等も俺を見たまま動いていない。


「どうやら向こうもこちらの出方を伺ってるね」


 どうも射茅視の言う事はよく分からない。難しい。もう少し簡単に説明してほしい。知らない言葉を話されても、頷くことしかできない。


 動かないことを理解したのか、黄色の服の人が変な物を取り出した。あれな何だ? 中心の棒に何かがぐるぐると巻き付いている。

「コマか」と射茅視が呟くが俺には一切合切分からない。一人で納得するな。


 途端黄色の服の人がその「コマ」を投げた。

 それを地面に付けずに左手に乗せ、それを肩に背中に逆の手に、と流れるようにコマを移動させ、そのまま宙に放たれた。


 なるほど。あれがあいつの武器なんだな。ならあれを壊せばいいんだな。そう思い、再度爆弾を出して投げた。

 だがそのコマが俺の投げた爆弾に向かって不規則に曲がり、逆向きになって、爆弾を回転させて跳ね返してきた。ヤバい。このままじゃ死ぬ。

 どうするか考えていると、横から小さな爆発音が聞こえた。横から飛んできた何かが俺の爆弾に当たり、爆発した。

 どうやら俺を守ってくれたらしい。そちらを見ると、射茅視が黒い服の人と闘っている姿が確認された。


 何か特別凄い戦いでもなかったが見入っていたら、腹に感じたことのない痛みが走る。さっきのコマが腹にぶつかり回転し続けた。痛みに耐えられず悲鳴を上げた。コマは攻撃できたと分かったら、爆煙の中に消えていく。

 食らった腹部の傷を確認すべく見ると、血が服に滲んでいた。斬り込まれている様だ。だが幸い大量には出血していない。どうやらあのコマには刃物が付いているらしい。


「驚いた? 私のコマにはミニチェーンソーがついているのよ。回転し続けると刃が出る仕様なの。まぁ、リマキに言っても分からないでしょうけどね」


 話しながら高速で紐をコマに巻きつける黄色の服の人。声色も余裕そうに感じる。


「そうだ! まだ練習段階だけどちょっとやってみてもいいよね」


 そう言うとコマの持つ角度を変え、大地にコマを叩きつけるように投げた。

 コマは地面すれすれで落下を止め、俺に向かって真っすぐ進んできた。

 黄色の服の人は紐を両手に持ち、ピンと張っている。奴が右に傾くと、コマもやや右に動く。あのコマは何かと連動している。

 回転しているコマは刃を出し、攻撃準備が整ったようだ。爆弾をぶつけても効かないなら、避けるしかない。


 俺は右に避ける事を選択した。それを見て黄色の服の人は左に傾く。それを指示にかコマも左に小さくカーブする。

 着地して右足で逆に飛ぼうと足を付くが、滑らせてしまいその場で転倒する。

 そのコマは俺の体の上を通り、そのまま天に向かってコマが舞う。もしあの位置にいたままなら中々の大怪我を負っていただろう。


「面白い! 面白いわ! だけどねぇ、私の方が上よ!」


 黄色の服の人はニヤリと笑い、紐を持った手を合わせ、気合を出しながら上下に引っ張る。

 すると、宙に浮かび上がっていたコマが真下に勢いよく落ちてきた。

 右の腹にコマが当たる。


 俺が悲鳴を上げると同時に地面が揺れる。

「何事じゃ?」

「地震だ! 2日前の余震かもしれない!」

「威加瀬よ、少し我慢してくれ」


 大地が揺れ、皆が思う様に行動出来ていない事がわかった。ヒーロー達は5人で固まり、道真ん中で屈んでいる。勿論こちらから目を背けたりはしていない。

 射茅視は、俺を抱えてその場を走り去っていった。

 大地の揺れは更に強まり、建物が倒壊していく。俺の家ともお別れのようだ。

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