第2話 ヒーロー参上

「せめて威加瀬だけでも、生き延ばせてあげなきゃ」

「私はもう、覚悟出来てるから」

「やめ、離して!」

「せめてでも、祈るのよ」


 ◇◇◇◇


 あの日から何日かが経過した。

 家族の帰りを待っていても、家に来るものはいない。それどころか、ここら辺にリマキは俺しかいないような気がする。

 外を軽く覗いてみるが、まるで震災後の様子に似ている。もう少しすれば飯もなくなる。正直限界を感じていた。


 特に理由もなく、その場で寝転がってみた。

 背中に何かチクッと刺さった気がするが、正直痛みは感じない。

 静かに体を休めていたら、外から声が聞こえる。


「この町っすよね? 初めての仕事に自分わくわくっすよ!」

「興奮するでない。俺らの目的は4日前に連絡がつかなくなったデザートレンジャーの発見と救出だ。もしかしたら攻撃する輩もいるだろう。みな心してかかれ!」

「まぁ、リマキに生き残りが居ればだけどねぇ」


 もしかして助けか? 外に出れば俺に気づいてくれるかもしれない。ちょっと外に出てみよう。

 扉をガラガラと開け、左右を見る。右側の平坦な道に謎の5人が横並びに歩いていた。


「おや? 子供か?」

「殺されに来る噂は本当なのねぇ。楽な仕事じゃん!」

「みんな伏せろ!」


 その瞬間聞いたこともない爆発音が街一体に鳴り響く。


「グリーン! おいしっかりしろ! おい!」


 どうやら彼等が誰かに攻撃されたらしい。左を向くと何かを構えた男が立っていた。


「これ終わったらリマキの焼き肉食べにいくんだろ! ここで死んだら魁さんとの約束はどうなっちゃうんだよ!」


 見たところ緑色の服を着た人の足から血が出ている様だ。左にいる男は指先から煙を出している。どうやらリマキのようだ。


「少年! 先日、この町に襲撃が来た時の事を知っているか」


 素早くこちらに駆け寄り、保護するように俺をマントで包んでくれた。家はもう崩れる寸前で危ないとかどうとか言っていたが、俺にはよく分からなかった。

 赤の他人に話しかけている。そんな器用なリマキがいるのか。心底感動だ。


「ふうん。いいね。君となら上手くいけそうだよ。私の名前は射茅視いかやしだ。共に戦わないか?」


 戦う? その行動にどんな意味があるのか俺はまだ分からない。だが、俺は大きく頷いた。脊髄反射だった。正直今後の事など何も考えていない。でも、ヒーローと戦うか逃げるかと言われたら戦いたくなってしまう。

 そして、このようなリマキが現れることを、俺は心のどこかで信じていたのかもしれない。


「あ、そうか。まだ喋れないよな。じゃあこの戦いに生き残ったら、言葉や文字を教えてあげるよ。だからまずは、あのヒーロー達をやっつけようか」


 親指を下に向けニヤリと笑っていたこいつは、その手を緑の服のやつに向けて、爆発音と煙を出した。なるほど、とにかくあの人たちをやっつければいいんだな。

 俺は取り出したそれを相手に投げつけた。


「おぉ、やる気だね! いいね、そうこなくっちゃ」


 射茅視というやつも両手を奴等目掛けて構えている。

 俺の能力は空想現実ファンタスティックトゥルー。頭で想像した物をどういう訳か現実に持って来れる。だけど、少し時間が経つと消えちゃう。だから、早めに使えるものを想像しないといけないんだ。


 俺は丸っこい爆弾を相手に投げつけた。


「旋風脚!」

 青色の服を着た人が俺の投げた爆弾を易易と蹴り返した。蹴られた爆弾は空に飛ばされ、花火のように爆ぜた。


「そんな物で我々と闘おうとは度胸があるのぅ! いくら初めての仕事じゃからって一撃で倒れる者と甘く見んで頂きたい」


 青色の服の人が両足でステップを踏み肩をぐるぐる回しながら言う。

 それを合図になのか、他の服の人達も同じステップを踏み、肩を回す。そして口を合わせてこの言葉を言う。


「「我等、回転戦隊!」」

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