第5話:優しさ

「...飛ばすよ!」

赤羽さんはそう言うと、人が変わったかのように真剣な顔つきになった。

ギャルルル!!!

そのスピードは、あのバトルしていた時よりも速く思えた。

漆黒の闇を切り裂くVTECの音が谺響する。

「もうすぐで着くからな!」

「...ふぇ...」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

気づくと私の家に着いていた。

私はあの後、気絶していたらしい。

「じゃあ、俺は帰るよ」

私は赤羽さんのその言葉を聞いた時、体よりも先に声が出ていた。

「待ってください!す、少し私の家で暖まっていってください!」

「...いいのか?」

「も、もちろんです!」

私は赤羽さんを呼び止め、家に入れてあげた。

「こ、コーヒーどうぞ」

「...ありがとね」

「.......」

「.......」

呼び止めたとはいえ、相手は私の血を吸ったヴァンパイア...なかなか話し出すことが難しい。

「...ちゃんと俺、自己紹介してなかったな」

「...へ?...」

「俺は赤羽直樹。18歳。性別はまぁ、見ての通りだ」

「え!年齢一緒!?」

驚きだ。

見た目が大人っぽいから、歳上だと思っていたけど、まさか同い年だったなんて...。

「結衣ちゃんも18歳なのかい?」

「...そうです」

「......唐突だけど、彼氏いる?」

「え!?な、なんで!?」

あまりにも唐突すぎて、飲んでいたコーヒーを吹き出してしまった。

「...か、彼氏は...いませんけど、なぜです?」

私は友達から恋愛下手と言われるぐらい、恋をするのが苦手だ。

そもそも、恋をしたことがないのだ。

「...いや、少し気になっただけだよ」

「そうですか...」

質問したい事だらけだったけど、今回はたった1つどーしても聞きたいことがあった。

「...私の血、美味しかったですか?」

こんな事を聞くのは可笑しいかもしれないけれど、今は聞きたい気分だった。

「...美味しかった...今までの中で1番。」

その答えを聞いた時、私はドキドキしていた。

何故か、ドキドキしてしまっていた。

「んーと、そろそろ、帰ってもいいかな?」

「あ、もちろんです!どうぞどうぞ!」

「じゃあ、また峠で。おっと、そうだ、ちゃんとFD回収しに行ってあげてよ?」

「は、はい!」

ーーーーーーーーーーーー

その夜、私は血を吸われる感覚が頭に残っていたせいでなかなか寝付けなかった。


続く...

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