第2話:狼の牙

「...君...名前は?」

「わ、私は、佐藤結衣...です」

急に名前を聞かれたものだから、顔を真っ赤にしてしまった。

「...君、顔が真っ赤だぞ」

彼はそう言いながら、また微笑んだ。

しかしその時からずっと気になっていた事がある。

赤羽さんは、あまり私に視線を合わさないのだ。

「......君はあの、FDに乗っているのかい?...」

「あ、そうです。あれが私の愛車なんです」

「...なるほど...一緒に走ってみるかい?」

「はぇっ!?...いいんですか!?」

思わず声を荒らげてしまった。

まさか、そんな夢のようなことが起こるとは...

「...いいよ、君の腕を見てみたいからね」

「じ、じゃあ、ぜ、是非お願いします!」

赤羽さんは少しだけ顔をチラつかせ、にっこりと微笑んだあとNSXに乗り込んだ。

私も慌てながらもFDに乗り込んだ。

「...じゃあ、下り1本だけだからね?」

「はい!お願いします!」

「先、行っていいよ」

赤羽さんの言う通り、私が先に走りだした!

「さーてと、お手並み拝見と行こうか!」

峠はロータリーエンジンとVTECエンジンの音が響き渡っていた。

ギュルルル!!!

「おぉ!なかなかやるなぁ、あの子!」

私は自分のできる限りのスピードを出した。

しかし、後追いなのにもかかわらず赤羽さんは、あっという間に私を追い抜く。

「赤羽さん...速い!!!」

全力で追いつこうとするが、全く追いつけない。

むしろ、赤羽さんは速くなっていく!

「...ッッッ!!!」

しかし、あっという間に峠は終わりを迎えていた。

「赤羽さん、速すぎだよ笑」

「すまねぇ笑」

「明日も、お会い出来ますか?」

「...それは、わからない。でも、会えたらよろしくな笑」

赤羽さんは、そう言うと暗闇の中に走り去っていった。

その夜、私は家に帰り、日記を書きつつ

「また会いたいなぁ〜」

そう呟き、ベッドに入った。


続く

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